advanced colon cancer
進行大腸がんとは

進行大腸がんとは

医療法人香誠会 えぞえ消化器内視鏡クリニック

進行大腸がんについて

大腸がんは、大腸の正常な粘膜細胞が様々な要因によって悪性化することで発生します。
進行大腸がんとは、残念ながら早期大腸がんよりも進んだ状態で発見された大腸がんと呼んでもいいでしょう。
この記事では、進行大腸がんについて、その特徴、症状、検査、および治療について詳しく説明します。

進行大腸がんの特徴

大腸がんが「早期大腸がん」なのか「進行大腸がん」なのかは、基本的にがんの根の深さ(深達度といいます)によって決まります。

大腸の層構造は【図1】のように、最も内側(表面)に粘膜があり、外側に向かって粘膜下層、筋層、漿膜という構成となっています。大腸がんは表面の粘膜から発生して徐々に深く浸潤していきます(根が深くなっていきます)ので、がんの根の深さが進行度を規定する重要な因子となります。

【図1】のように、Tis、T1、T2・・・と大腸がんの根は深くなっていきますが、Tis~T1にとどまる段階を「早期大腸がん」、T2よりも深く浸潤した(深達度が深い)段階(t2~T4)を「進行大腸がん」と呼びます。
進行大腸がんの場合、病期の広がり(ステージ)が治療方針を決めるのにとても重要になってきます。

 

【図1】大腸がんの深達度

進行大腸がんの症状

大腸がんは、進行した状態でも症状が全くない方が実はかなり多いというのが一番怖いところです。検診や人間ドックで行われる便潜血検査で「陽性」となって受けた大腸カメラや、別の目的(腹痛や便通異常の原因精査など)で受けた大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で偶然に発見されることが多いのも特徴です。

進行大腸がんが肛門に近い左側の大腸にできた場合、固形便が通過する場所であるため便が通過することによる様々な症状(便に血が混じる、便が細くなる、下痢や便秘を繰り返す、など)が現れることがあります。しかし、進行大腸がんが右側の大腸にできた場合は、通過する便がまだ液体であるが故にがんの通過に伴う症状がかなり出にくく、おなかの表面から固いしこりとして触れることに気づいたり、慢性的な出血で貧血になったりする程度で、かなり進行してからみられる症状が多くなります。

以下のような症状が続いたり繰り返し起こったりする場合には必ず専門医に相談してください。

  • 便に血が混じる、血便が出る
  • 便が細い残便感がある
  • お腹が張る、腹痛がある
  • 硬いシコリが触れる
  • 下痢と便秘を繰り返す、下痢が続く
  • 貧血が出てきた
  • 体重が減ってきた

進行大腸がんの検査

進行大腸がんを発見・診断するための検査には、以下のような方法があります。

 

便潜血検査

便の中に微量な血液が混じってないか検出するための検査です。人間ドックや大腸がん検診や企業健診などで実施されることがあります。
早期大腸がんの発見、大腸がんの予防にはとても重要な検査ですが、軽視される傾向もどうしてもあります。便潜血検査の意義などについての詳細は以下のページをご覧ください。

※当然ですが、肉眼的に血液が混じった便が出た場合は便潜血検査を実施するまでもなく、大腸内視鏡検査を受けていただくことになります。

 

 

大腸内視鏡検査

内視鏡を使用して大腸全体を観察し、がんの有無や病変の詳細(大きさ、深達度、位置など)を診断します。必要に応じて組織を採取し(生検)、病理検査でがん細胞の有無や性質などを詳しく調べます。
また、外科手術を想定して先に切除しておいた方がいいと思われるポリープを認めた場合、日帰り治療で対応できる範囲の病変はすべて当日切除を行っています。
当院の大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の詳細については以下のページをご覧ください。

 

各種画像診断

進行大腸がんと診断された場合、さらに画像検査(注腸造影検査[バリウムの検査]、CT検査、MRI検査など)によって、がんの位置や深達度、他臓器浸潤、リンパ節転移、他臓器転移の有無などを確認し、正確な病期(ステージ)を判定して治療方針を決定します。

進行大腸がんの治療

進行大腸がんの治療としては、以下のようなものがあります。
大腸がんの病期ごとのおおまかな治療法を【図2】に示します。病期によって治療方針が異なってきますので、詳しくは担当医に確認してください。

 

外科手術

大腸がんの治療は「がんを切除する」ことが基本です。
がんが他の臓器に転移している場合でも、切除が可能であれば手術で切除します。
発見・診断時には切除できないと判断されたがんに対しても、抗がん薬を用いた薬物療法を行うことで切除が可能になることがあります。

 

薬物療法

抗がん薬をメインとして様々な新規薬剤が開発されている進歩が著しい分野です。
薬物療法には大きく分けて以下の3種類があります。

 

緩和的化学療法

外科的切除が難しいと判断された場合の全身治療としての薬物療法です。
がんの根治を目指すことが難しい場合に、できるだけ病気の進行を抑えるために行われる治療です。

 

術前補助化学療法

外科手術ができるように病変を縮小させたり、術後の転移リスクを下げるための薬物治療です。

 

術後補助化学療法

手術の結果、リンパ節転移や他臓器転移のリスクが高いと判断された場合に、転移のリスクをできるだけ下げるために行われる薬物治療です。

 

放射線治療

部位的、サイズ的、全身状態など様々な理由で外科的手術が難しいと判断された場合、局所制御の目的で放射線治療が行われる場合があります。

 

 

以上が、進行大腸がんについての基本的な情報です。
早期に症状に気づき、適切な検査と治療を受けることが重要です。定期的な健康チェックを怠らず、必要に応じて医師の指導を仰ぐことで、がんの早期発見と根治的治療のチャンスを逃さないようにしましょう。

 

 

  • 【図2】大腸がんの治療戦略

  • 【図3】進行大腸がん