大腸腺腫とは、大腸にできるポリープの一種です。
この記事では、大腸腺腫について、その特徴、症状、検査、および治療法について詳しく説明します。
大腸腺腫は良性の腫瘍ですが、ある程度の大きさになると内部にがんが発生する可能性が高くなることが分かっています。大腸がんは腺腫を経て発生することが最も多いとされていますので、分かりやすく表現すれば「大腸腺腫は大腸がんのタマゴのようなもの」と言うこともできるでしょう。腺腫の段階で切除することができれば、大腸がんになる可能性を低下させるだけでなく、大腸がんで死亡する可能性も減らすことができるという確たるデータが得られていますので、大腸ポリープが腺腫の段階で切除するのはとても重要なことなのです。
また、内視鏡で見た感じはいかにも良性の腺腫であっても、切除した病変を病理組織検査をする(切除した病変を顕微鏡でみる)と、一部に早期大腸がんが併存していた、ということも決して希ではありませんので、一定の大きさを超えている場合は、取り残すことがないように慎重に内視鏡で切除することがきわめて重要です。
大腸腺腫の具体的な原因ははっきりしませんが、以下に挙げるような要因がリスク因子となることが様々なデータで分かってきています。
血縁者に大腸がんや大腸腺腫をもたれている方が複数いる場合はリスクが高くなるとされています。
高脂肪食や低食物繊維食の摂取は、大腸腺腫のリスクを高める可能性があります。
年齢が上がるにつれ、大腸腺腫の発生リスクは高まる傾向にあります。
適度な運動をしない方は大腸腺腫の発生リスクがやや高い傾向があります。
無症状であることがほとんどです。
健康診断や人間ドックで行われる便潜血検査で「陽性」になった人が大腸カメラを受けることで見つかる場合が多いです。基本的には検査を受けない限りは見つかりません。
大腸腺腫の検査として有効とされるものは以下の3つです。
医師が内視鏡を使用して大腸全体を観察し、腺腫の有無や大きさを確認します。
便潜血検査で「陽性」となった場合は基本的に内視鏡検査(大腸カメラ)が必要となります。内視鏡検査は準備が煩雑ではありますが、ポリープが見つかった場合は大きさによってはその場で切除が可能であること(がんの予防が可能)、大腸がんを疑う病変やその他特定の病気を疑う異常所見があったりした場合に組織検査(生検)による診断の確定が可能であること、などが他の検査と大きく異なるメリットです。
ただし、ただ単に大腸内視鏡検査を受けさえすればいいという訳ではなく、質が担保された検査を受けることがきわめて重要です。大腸内視鏡検査の質を評価することはなかなか難しいのですが、客観的指標の1つとされているのが大腸腺腫検出率(ADR:Adenoma Detection Rate)です。計算対象とする母集団の性質(年齢や性別や人種や検査経験数など)によってADRは異なってきますし、日本国内での推奨値もハッキリしていませんが、米国では「検査を受ける方は検査医師のADRが最低25%をクリアしているか確認するべきである」と推奨されています。当院のADRは全患者を対象として毎年40%台で推移していますので、内視鏡検査の質としては十分担保できていると考えています。安心して検査を受けてください。
当院の大腸カメラの詳細は以下のページを参照ください。
CTコロノグラフィーとも言われます。
大腸内の便をきれいにする前処置を行った上で内視鏡を挿入せずにCT撮影を行うことで大腸を検査する比較的新しい検査方法です。肛門から柔らかいカテーテルを5cm程度挿入してゆっくりと炭酸ガスを注入し、大腸を拡張させてCT撮影する方法です。大腸内視鏡検査に抵抗がある方や、腹部術後の癒着などで内視鏡検査の実施が困難だった方には有効な検査ですが、ポリープを認めても切除ができない点、大腸がんを疑う所見を認めても組織検査(生検)ができない点がこの検査の弱点です。
大腸内の便をきれいにする前処置を行った上で、肛門から柔らかいカテーテルを5cm程度挿入してゆっくりとバリウムと空気を注入し、大腸を拡張させてレントゲン撮影する方法です。バリウムを全体に行き渡らせるために体を上下左右に動かす必要がありますので、「想像していたよりも辛かった」という方も少なくありません。大腸内視鏡検査に抵抗がある方や、腹部術後の癒着などで内視鏡検査の実施が困難だった方には有効な検査ですが、ポリープを認めても切除ができない点、大腸がんを疑う所見を認めても組織検査(生検)ができない点がこの検査の弱点です。
大腸腺腫の治療は「病変をきれいに切除する」ことが基本です。切除する方法としては以下の2つがあります。
「大腸腺腫」を内視鏡で切除する方法には以下の通り大きく分けて3種類あり、病変のサイズ、存在部位、形などによって適切な方法が選択されます。
すべて保険適応です。
当院で実施している方法は(3)のポリペクトミーです。当院では日帰り治療で対応できる場合のみを治療対象としていますが、病変のサイズや切除方法によっては1週間前後の入院が必要となる場合がありますので、(1)ESDや(2)EMRを必要とするような病変の場合は専門施設に紹介しています。
「大腸腺腫」であっても、サイズ・形態・存在部位などのどれか1つでも内視鏡治療困難な因子がある場合は偶発症のリスクも出てきますので外科的手術の適応となります。
以上が、大腸腺腫についての基本的な情報です。
健康な食生活を心がけること、定期的な健診やドックを受けること、便潜血検査で「陽性」となったらちゃんと大腸内視鏡検査を受けること、などが大腸腺腫の段階で発見して大腸がんを予防するために重要なことです。
典型的な腺腫の切除方法
スネアを引っかける
スネアで締める
通電して切除する