厳密には結腸癌と直腸癌に分けられますが、ここでは両方あわせて大腸がんとして説明します。 新たに診断される方は年間10万人あたり約100人で、男性にやや多い病気です。
男性 | 年間10万人あたり約120人 |
女性 | 年間10万人あたり約90人 |
年齢的にみると、40歳代から増加し始め、50歳代で急増し、高齢になるほど多くなります。
男性では最も多く、女性では乳がんに次いで2番目に多い我が国では主要ながんの1つです。
我が国では男女とも横ばいとなっておりますが、まだまだ患者数が非常に多い状況です。
大腸がんにかかる割合は年々増加しており、一生のうちに大腸がんに罹患する確率は、男性では11人に1人、女性では13人に1人とされています。
大腸がんになる方は40歳代から増加する傾向がありますので、40歳を超えたら大腸がん検診や大腸カメラを受けるように心掛けましょう。
初期には自覚症状がほとんどありません。
病状が進行して腫瘍が大きくなるにつれて、次のような症状が現れることがあります。気になる症状がある場合はできるだけ早めにご相談ください。
排便状態 | 血便、下血、便が細い、便秘、便回数の増加 |
自覚症状 | お腹が張る、腹痛、残便感、しこりを触れる |
他覚所見 | 貧血、体重減少 |
危険因子としては、①年齢(50 歳以上)、②大腸癌の家族歴、③高カロリー摂取および肥満、④過量のアルコール、⑤喫煙などが報告されています。
抑制因子としては、①適度な運動習慣、②食物線維などの報告がありますが、食物繊維・果物・野菜を積極的に摂取しても発生率が減少したという証明はされていません。
これらを考慮すると、生活習慣に気をつけるのは他の病気のことを考えると必要ではありますが、大腸がんの抑制という意味においては「一定の年齢(40歳代)になったら大腸カメラ検査を受けて大腸がんになるリスクのあるポリープの段階で発見して切除する」ことが最も確実で効果が高いと言えるでしょう。
食事 | 赤身肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど) |
嗜好 | 飲酒、喫煙 |
体格 | 体脂肪の過多、腹部の肥満、高身長 |
遺伝 | 家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の家系 (近親者で若くして大腸がんに罹患した方がいる場合など) |
大腸がんの発見・診断に有効な検査としては、便潜血検査や大腸内視鏡検査(大腸カメラ)があります。
がんやポリープによる出血を検出する検査です。便潜血検査陽性の時、5%程度の方に大腸がんが見つかります。また、80%ぐらいの方に痔が見つかります。
1回でも便潜血検査が陽性になった場合には、その原因を明らかにするために、必ず大腸内視鏡検査を受けましょう。大腸がんがあったとしても常に出血しているわけではありません。くれぐれも、「便潜血検査が陽性になったため、念のためもう1度便潜血検査を受けてみる」とはしないようにしましょう。折角受けた便潜血検査の意味がなくなり、早期発見の機会を逃してしまうことになりかねません。
「痛い」・「つらい」・「怖い」などと思われがちですが、熟練した内視鏡医が最新の内視鏡システムを使用して丁寧に検査することで、ほとんど痛みや苦痛を感じずに受けることが可能です。初めて検査を受ける方、過去に痛い思いをされた方は特に不安だと思いますので、事前診察の際にでも何なりとご相談ください。鎮静剤や鎮痛剤を適切に使用していることや過去の検査実績・実際に受けられた方の感想などについて詳しく説明させていただきます。
当院では、最新の内視鏡システムを用いて、痛みや苦痛を最小限に抑えた大腸内視鏡検査を行っておりますので、安心して受診ください。
がんの予防は、1次予防と2次予防に分けられます。
1次予防 | がんになりにくい体質づくりをすること |
2次予防 | 早期発見と早期治療により、がんによる死亡を抑えること |
大腸がんの1次予防として有効な手段は、食生活の改善(肉を控えめにして野菜を多く摂る)や適度な運動(1日20分以上のウォーキングなど)が挙げられます。
2次予防は、大腸がん検診などで便潜血検査を受けることです。便潜血検査が1回でも陽性となった場合は、必ず大腸内視鏡検査を受けましょう。
また、大腸内視鏡検査をうけて大腸ポリープが見つかった場合、良性で小さいうちに切除することも大腸がん予防の極めて有効な手段です。ポリープの種類にもよりますが、折角発見できたポリープはしっかり治療まで受けていただくことが重要です。
大腸ポリープは大きく分けると「腫瘍性のもの」と「非腫瘍性のもの」があります。「非腫瘍性ポリープ」は全て良性です。「腫瘍性のもの」は「良性の病変」と「悪性の病変」に分けられ、悪性の病変が「がん」です。
大腸がんは、ごく一部のケースを除き、良性の腫瘍性ポリープから発生すると考えられています。したがって、大腸がんになる前の良性腫瘍性ポリープ(下図の腺腫)の段階で切除する事で、大腸がんになるリスクを大幅に軽減できるのです。
当院では、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で腫瘍性のポリープ(腺腫)が発見された場合、10mm以下(あくまで目安)であれば日帰りでのポリープ切除を行っています。安心して検査をお受けください。
大腸がんは徐々に大きくなってくると大腸の内側に向かって盛り上がってくるため、徐々に内腔が狭くなってきます。場合によっては便の通過が著しく阻害されるため、ある日突然“腸閉塞”をおこしてしまう場合もあります。
左:大腸がんによって狭くなりつつある状態
右:大腸がんによって閉塞しつつある状態
大腸がんのステージ(病期)は、腫瘍が大腸壁のどの深さまで達しているかを示す「T因子」、リンパ節転移の広がりを示す「N因子」、他臓器への遠隔転移の有無を示す「M因子」の3項目を判断材料として、ステージ0、I、II、III、IVの5段階に分類されます。
ステージの数字が大きくなる程、がんが進行している状態を表します。
この中で内視鏡検査で診断できるのは「T因子」のみで、他の「N因子」「M因子」はCT・MRI・PET検査などの画像診断を駆使して診断されます。
ステージによって治療方針や治療成績が大きく異なりますので、治療前に精密検査でステージを診断した上で最も適切な治療方針が選択されます。
早期の大腸がんであれば内視鏡治療(胃カメラを使った切除方法)での治癒切除も可能ですので、体への負担もかなり小さく済みます。大腸がんの場合、病変の形やサイズによっては日帰りでの手術も可能ですし、入院が必要となった場合でも1~2週間程度の短期入院で済むことが多いです。
しかし、進行大腸がんとなれば、外科的手術が必要となり、場合によっては術前術後補助化学療法も受ける必要が出てきますので、体への負担は大きくなり治療期間もかなり長くなります。
がんは部位によらず早期発見が第一です。症状がなくても定期的な検査を受けるようにしてください。