脂肪腫は体中のどこにでもできる良性腫瘍ですが、そのうち大腸にできたものを大腸脂肪腫と呼びます。
この記事では、大腸脂肪腫について、その特徴、原因、症状、検査、および治療について詳しく説明します。
一般的には、大腸粘膜の下に位置する粘膜下層に発生し、脂肪細胞から形成されます。大腸脂肪腫はそれほど頻度が高い疾患ではありませんが、粘膜由来ではない腫瘍の中では最も頻度が高いとされています。
大腸脂肪腫の原因については現時点では不明としていいと思いますが、調べてみるといくつかの可能性が提唱されているようです。原因が分かったところで予防する必要はないため、あまり深く考える必要はないと考えています。
家族歴によって大腸脂肪腫の発症リスクが高まることが報告されているようです。
大腸脂肪腫は、慢性的な大腸の炎症状態に関連しているとする研究もあります。炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)を持つ方では、大腸脂肪腫の発生率が高いとする研究結果もあるようです。
脂肪細胞の異常な成長や増殖に関連する要因が関与している可能性があるという説もあります。
大腸脂肪腫は一般的には無症状であり、偶然検査や手術によって発見されることが多いです。しかし、腫瘍が大きい場合は以下のような症状が現れることがあります。
大腸脂肪腫が大きくなり、大腸の通過を妨げるようになると、腹痛や腹部不快感が生じることがあります。この痛みは通常、腫瘍が存在する部位に関連して現れます。最悪の場合、腸重積を起こすこともありますので、激しい腹痛を自覚することもあります。
大腸脂肪腫が大腸の内腔を占拠するサイズになると、腸管の蠕動に異常が生じることで、便秘・排便困難・排便頻度の異常・便の形状の変化などが生じることがあります。
大腸脂肪腫が潰瘍を生じることがあり、それによって出血が生じる場合があります。便に鮮血が混じることがあります。
このような症状が現れた場合には、脂肪腫以外の病気である可能性もありますので、正確な診断には適切な検査が必要です。必ず医師に相談するようにしてください。
大腸脂肪腫の検査としては、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)とCT検査が有用です。
内視鏡検査では、表面が滑らかな正常粘膜に覆われた黄色調の腫瘤として観察されます。軟らかい病変ですので、鉗子で押すと凹む「cushion sign(クッションサイン)」が陽性となるのが特徴的です。度重なる腸管蠕動などの刺激によって、表面粘膜が荒れてびらんや潰瘍を形成することがあり、通常の大腸ポリープとの見分けが難しい場合もまれに経験します。
CT検査や超音波検査では、腫瘤が脂肪と同じCT値(明るさ)を示すため、質的な診断にとても有用です。腸重積の有無をチェックするのもCTで可能となります。
一般的に、小さな脂肪腫や無症状の場合には特別な治療は必要ありません。
ただし、大腸脂肪腫によると思われる症状が出現している場合、大腸脂肪腫が悪性化している可能性を疑う場合、他の病気との区別が難しく、病理学的診断が必要な場合、などは手術による切除が考慮されることもあります。
以上が、大腸脂肪腫についての基本的な情報です。
適切な経過観察や治療を受けるために、医師のアドバイスに沿って定期的に検査を受けておくことが重要です。
大腸脂肪腫の例