大腸の粘膜に生じる“イボ”の様な隆起をポリープと呼びますので、色々な形状のポリープがあります。
また、ポリープには良性のものと悪性のものがありますが、良性であっても腫瘍性のポリープ(腺腫)は大きくなってがん化する可能性を有しています。したがって、ほとんどが切除不要な胃のポリープとは異なり、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で腫瘍性のポリープ(腺腫)が見つかった場合、原則的に検査中に切除(日帰り手術)してしまいます。大腸がんは、ポリープの段階で内視鏡で切除することによって予防できるのです。
大きく分類すると「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」に分類できます。
腫瘍性ポリープはさらに「良性」と「悪性」に分類されます。
一般的に大腸内視鏡検査の際に切除を要するポリープは「腫瘍性ポリープ」です。「腺腫」の段階で切除することで病変が増大して癌化することを未然に防ぐことができますので、大腸カメラは大腸がんの予防に直結する数少ない検査とされています。
また、「非腫瘍性ポリープ」の中には「腫瘍性ポリープ」との鑑別が困難な病変がありますので、5mmを超えるようなポリープは基本的には切除が推奨されています。
担癌率(たんがんりつ)とは、ポリープの一部に「がん」が併存する割合です。
腫瘍性ポリープ(腺腫)は徐々に大きくなり、大きくなるにつれて担癌率が上昇します。
腺腫の担癌率は論文によって幅がありますが、大まかに分かりやすくまとめると次のようになります。
径 5mm未満・・・ 約0.5%
径 5~10mm・・・ 約5%
径 10~20mm・・・約20%
径 20~30mm・・・約25%
径 30mm以上・・・約30%
腺腫の性質によっても癌化率は違ってきますが、径10mmを超えると担癌率が一気に上昇します。
このことからも、小さい段階で発見して切除することが最も効率的に「がん」を予防することができる方法であることがご理解いただけると思います。
大きくなるポリープ=腫瘍性ポリープ(腺腫)という前提で考えます。
よく患者さんに「このポリープはいつ頃からあったのでしょうか?」と聞かれることがありますが、実は明確に答えることができる程のデータはありません。
腺腫の種類や性質によって大きくなるスピードが異なるため、「病変によって異なるため正確には分からない」というのが答えになります。
少なくとも都市伝説のように語られる「年を取ったら病気の進行も遅い」というのは、大腸ポリープや腫瘍性の病気には当てはまらないことは確かですので、年齢に関係なく早期発見・早期治療によるがんの予防が望ましいのです。
ポリープのサイズが大きくなって、便の通過を妨げない限り自覚症状はほとんどありません。硬い便が通る部位(S状結腸や直腸など肛門に比較的近い部位)に大腸ポリープできた場合、便が通過する際に擦れてわずかに出血することがあり、便に血が混じることがあります。「便潜血検査」は肉眼では分からないほど微量な血液が便に含まれていないかを調べる検査です。大腸ポリープがある程度の大きさになると便潜血検査で陽性を示すこともありますが、ポリープが小さい場合や、柔らかい状態の便が通過する部位(盲腸~上行結腸~横行結腸など肛門から比較的遠い部位)にポリープがある場合は陰性になってしまいます。また、便潜血検査は痔からの出血でも陽性になることもありますので、あくまで目安の1つであると認識してください。
40代以降の方は、症状や便潜血の有無にかかわらず、定期的に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることをおすすめします。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、大腸全域の粘膜を詳細に観察できる唯一の検査です。当院では、再診の内視鏡システムを用いて、丁寧に時間をかけて観察することでかなり小さいポリープでもできる限り見逃さずに発見できるように務めています。切除を要するタイプの大腸ポリープ(腫瘍性のポリープ:腺腫)であると診断された場合、当院ではたとえ小さくてもすべてその場で切除する日帰り手術を行っています。当院で大事にしている基本的なスタンスは、「自分だったら切除してもらいたいと思うような病変はすべて切除する」です。切除した病変は回収して病理検査を行い、今後の経過観察期間などを決定します。
当院では、最新の内視鏡システムを用いて、痛みや苦痛を最小限に抑えた大腸内視鏡検査を行っておりますので、安心して受診ください。
大腸がんに関しては、早期大腸がんや大腸ポリープ(腫瘍性のポリープ:腺腫)は内視鏡で切除できますので、最小限のリスクや身体的負担での根治や予防が可能です。生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を守るため、治療成績を最大限向上させるには、早期発見・早期治療がとても重要です。
ただし、早期大腸がんや大腸ポリープの段階では自覚症状がほとんどないため、症状のない段階で定期的な大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けないことには発見はできません。大腸がんの発症リスクが上がり始めるのは40歳を超えたくらいの年齢です。これまで大腸カメラ検査を受けたことがないという方、40歳を過ぎたら症状が特になくても大腸カメラ検査を1度は受けることをお勧めします。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける最大のメリットは、大腸に異常所見がないかどうか直接観察できるだけでなく、病変を発見したらその場で治療(日帰り切除)ができる点です。こうすることで、別の日に改めて治療を受ける必要がなく、面倒な食事制限や下剤服用も1回だけ我慢すればいいことになります。切除自体は5~10分程度ですので、観察のみの場合と比べてもそれほど時間がかかるわけではありません。ただし、大腸ポリープの大きさ・数・形状によっては日帰り手術では対応できないケースもありますが、その場合は連携している高度医療機関と連携することで、できる限りスムーズに治療を受けていただけるように心がけています。
当院では、ほとんどの病変に対して、(1)ポリペクトミー、(2)コールドポリペクトミーのいずれかの方法を用いて治療を行っています。ポリープの大きさや形状によって2つの方法を使い分けています。
最近当院では、高周波電流を流さずに切除するコールドポリペクトミーを主に用いています。熱ダメージが加わらないため、後出血などの合併症をおこす頻度が低いとされる方法です。
内視鏡的ポリープ切除術についての詳細は下のリンクを参照ください。