十二指腸がんとは、胃の奥に位置する十二指腸に発生するがんのことです。
この記事では、十二指腸がんについて、その特徴、症状、検査、および治療について詳しく説明します。
十二指腸がんの具体的な原因やメカニズムはまだ不明な点が多いとされています。
胃がんや大腸がんと比べると発生頻度はかなり低く、「きわめてまれ」と言っても過言ではありません。
胃カメラで発見される頻度は、0.01〜 0.02%とされていますので、1万人に1〜2人という頻度となります。
十二指腸がんは頻度が低いがんですので、がんの進行度(ステージ)や分類などを決定するための取扱い規約がないだけでなく、最も優れた治療とされる「標準治療」も確立されていないというのが現状です。
他のがんと同様に、十二指腸がんの初期段階で症状が現れることはほとんどありません。
進行してがんが大きくなると、以下のような症状が出現することがあります。
腹部の痛みや不快感が生じることがあります。
食物や水分の通過が妨げられ、胃もたれや悪心・嘔吐が生じることがあります。
腫瘍からの出血により血液の混じった黒い便が排出されることがあります。
腫瘍からの慢性出血に伴う貧血による疲労感や倦怠感が生じることがあります。
病状が進行すると食事摂取量低下や体重減少を来すことがあります。
十二指腸がんの診断には、以下のような検査が必要となります。
通常は発赤調の病変として発見されます。
胃がんや大腸がんと基本的には同じような感じで、表面に不整な凹凸が目立つ、一部に潰瘍を伴う、正常部位との境界が明瞭、などの特徴があります。
十二指腸の良性腫瘍である「十二指腸腺腫」との区別が付きにくかったり、内視鏡検査だけでは診断確定が難しい場合もありますので、診断を確定するため、基本的には生検組織を採取して病理組織検査を行うことになります。
内視鏡検査の際に病変の一部を鉗子を使って採取し、病理組織検査に提出します。
病理組織検査を行うことで十二指腸がんに特徴的な所見が確認できれば診断が確定できます。
病気の進行度(臨床病期)を評価するために、CTやMRIなどの画像検査が行われます。
消化管に限局しているかどうか、どのレベルのリンパ節まで広がっているか、他の隣接する臓器に浸潤していないか、遠隔臓器への進展がないか、などを評価し、病気の進行度を評価して治療方針を決定します。
十二指腸がんの治療法は、がんの進行度や患者の状態に応じて異なります。一般的な治療法には以下のものがあります。
ごく早期で表面の粘膜内にがんが留まっている場合は、胃カメラを使って病変を切除できます。ただし、十二指腸の壁は非常に薄いので、内視鏡治療の中では偶発症の発生頻度が高い臓器です。
がんの場所やひろがりによって術式は異なりますが、一般的には周囲のリンパ節を含めて切除されます。最も頻度が高い乳頭部を巻き込む病変となると、膵頭十二指腸切除術という術式となりますので、体への負担が大きい治療となります。
離れたところにあるリンパ節や他の臓器に転移があるような場合、全身治療が必要になりますので抗がん薬を用いた化学療法が行われることがあります。ただし、他の臓器のがんとは異なり、確立された標準治療がないのが現時点での課題です。
以上が、十二指腸がんについての基本的な情報です。
十二指腸がんの疑いがあると診断された場合は、医師のアドバイスに従い、適切な精密検査や治療を受けるようにしましょう。