Early symptoms of colorectal cancer
大腸がんの初期症状について

大腸がんの初期症状について

医療法人香誠会 えぞえ消化器内視鏡クリニック

大腸がんについて

大腸がんは2019年のデータによると、がんの中で一番多い患者数になっています。死亡数は2位になっています。

大腸がんは、早期であれば非常に良好な治療成績を得ることができます。そのため、適切なスクリーニングと早期発見・早期治療が生存率を大きく左右します。

しかし、残念ながら大腸がんは早期の段階では症状がほとんどありません。自覚症状が現れる頃には病状が進行している可能性が高いのです。

ここで言う「初期症状」とは、大腸がんによって出現する可能性がある「最初に見られる症状」という意味で紹介しています。大腸がんで起こりうる初期症状について正しく理解し、早めに医師に相談(専門医を受診)することが重要です。ここでは、大腸がんで見られる初期症状について詳しく解説します。

大腸がんとは

大腸がんとは、大腸の粘膜細胞が悪性化することで発生する病気です。

大腸は消化器の一部で、食べ物から水分や栄養素を吸収し、残り物を排泄する役割を担っています。盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に分かれ、それぞれに特徴的な構造や機能を持っています。

 

大腸がんは、大腸の粘膜から発生したがん細胞が増殖することで進行し、大腸の壁構造を破壊したり、血管やリンパ管にがん細胞が入ることでリンパ節や肝臓や肺など他の臓器に転移していく病気です。大腸にできた良性の腫瘍性ポリープ(腺腫)も、5年から10年程度で癌化するかもしれません。進行は比較的ゆっくりですが、進行するにつれて血便や便通異常などの症状が現れます。

 

また、発生部位によっても症状は異なります。
右側(盲腸~上行結腸)の大腸がんでは貧血や体重減少などの全身症状が出やすく、左側(下行結腸~S状結腸)の大腸がんでは血便や便秘などの消化器症状が出やすいことが特徴とされていますが、いつもそうなるとは限らないのが難しいところなのです。

 

大腸がんが早い段階で発見されれば病気の広がりも限定的であるため病巣を取り除けば(内視鏡治療や外科手術)根治することが可能ですが、進行した大腸がんはリンパ管や血管の中にがん細胞が入り込んで病気が全身に広がっているため、治療は困難となります。

 

大腸がんの統計

2019年度のデータによると、大腸がんになった人は、男性は約8万8000人で2位、女性は約6万8000人で2位です。男女合わせると、がん患者数の1位になっています。

2021年のデータで大腸がんは約5万人が死亡しており、死亡数は肺がんに次ぐ2位になっています。男女別では男性より女性の方が罹患率は低いですが、死亡率はほぼ同じです。また年齢別にみると、患者数は40歳以上で急激に増加し、70歳代でピークに達します。このことからも、大腸がんは日本人にとって非常に身近ながんであることがわかります。

大腸がんの初期症状

大腸がんの初期段階では、粘膜内に限局した小さな病変であることが多いため、自覚症状はほとんどありません。
しかし、大腸がんは時間とともに成長し、大腸の内部が狭くなったり閉塞したりすることがあります。そうなると、その部位を便が通過する際に様々な自覚症状を引き起こします。

大腸がんが大きくなると現れる可能性がある代表的な自覚症状としては以下のようなものがあります。

  • 血便や下血
  • 排便習慣の変化
  • 便の形状や色の変化
  • 腹痛や腹部の違和感
  • 貧血
  • 嘔吐
  • 体重減少

 

これらの自覚症状は大腸がん以外の原因でも起こり得るため、必ずしも大腸がんの存在を示すわけではありませんが、気になる場合は早めに医師に相談することが重要です。

 

大腸がんの症状

血便や下血

血便や下血は大腸がんの最も一般的な自覚症状です。
血便とは便に血液が混じった状態を指し、下血とは肛門から赤い血液(新鮮血)が出ることを指します。
大腸がんの場合、これらの症状は便が通過するときにがん細胞の表面が便と擦れることで傷ついて出血することで起こります。
特に直腸やS状結腸など肛門に近い部位に大腸がんが発生した場合は、比較的硬い便が通過する場所ですので病巣部から出血しやすくなります。

しかし、盲腸や上行結腸など大腸の奥の方(肛門から遠い部位)に大腸がんが発生した場合は、液体に近い便が通過する部位であるため病巣部からの出血が起こりにくく、さらに出血があったとしても便と混じったり時間が経ったりして黒~褐色に変色することも多いため、出血に気づかない場合も少なくありません。

 

排便習慣の変化

排便習慣の変化も大腸がんの一般的な自覚症状です。
特に周期的な便秘や突然の下痢が続く場合は注意が必要です。
便秘や下痢は、大腸がんが大きくなることで腸管が狭くなったり閉塞したりすることで起こります。

また、排便後にも便意を感じたり(残便感)、なかなか排便が得られずに苦しく感じたり(排便困難)、便の量や回数が変化する場合もあります。

 

便の形状や色の変化

便の形状や色の変化も大腸がんの自覚症状の一つです。
特に便が細くなる場合は、大腸がんが大きくなることで便の通り道を狭めている可能性がるので注意が必要です。
また、便の色が黒っぽくなる場合は、大腸の奥の方で出血している可能性があります。便の色が赤っぽくなる場合は、大腸の中でも肛門に近い部位で出血している可能性があります。
これらの症状が持続する場合は、決して放置せず専門医に相談してください。

 

腹痛や腹部の違和感

大腸がんが進行すると、腹痛や腹部の違和感が起きることがあります。
大腸がんが大きくなることで大腸壁に浸潤することで、炎症や閉塞を引き起こしているかもしれません。
腹部にしこりを自覚したり、腹鳴(おなかがゴロゴロ鳴ること)がある場合も注意しましょう。
もし腹部に違和感や持続する痛みが続く場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

 

貧血

貧血は大腸がんが進行した場合に見られる自覚症状です。
貧血とは血液中の赤血球やヘモグロビン(酸素を運ぶ物質)の量が減少することで、酸素不足による全身の不調を引き起こす状態です。

貧血の原因は様々ですが、大腸がんの場合は病巣からの慢性的な出血によって赤血球やヘモグロビンが失われることで起こります。
貧血になると、倦怠感、息切れ、動悸、めまい、顔色の悪さなどの症状が現れます。

他に自覚症状が全くなく、「貧血の原因を調べてみたら大腸がんだった」というケースも希ではありません。大腸がんに限らず、貧血症状がある場合は原因となるような病気がないかどうか精密検査が必要となりますので医療機関を受診されることをお勧めします。

 

嘔吐

嘔吐の原因は様々ですが、大腸がんの場合は大腸がんが大きくなることによる腸管の閉塞や狭窄などの重篤な合併症が起こっている可能性が否定できません。

嘔吐を繰り返すと、水分や栄養素の不足、電解質バランスの乱れ、消化器官へのダメージなどの問題が生じますので、早めに医療機関を受診するようにしてください。

 

体重減少

大腸がんが進行して腫瘍量が増加してくると、がん細胞が体の脂肪やタンパク質を分解してエネルギーにしようとするため、普段と同じように食べていても体重が減っていきます。
ただし、体重減少は他の病気の可能性もありますので、しっかり食べているのに体重が減る場合は精密検査を受けるようにしてください。

大腸がんになりやすい要因(危険因子)

大腸がんになりやすい方は、以下のような特徴やリスクを持つ方と言われています。

  • 年齢が高い…大腸がんは40歳代から発生しやすい
  • 男性…男性の方が女性より大腸がんの罹患率や死亡率が高い
  •  飲酒や肉の摂取が多い
  • タバコを吸う
  • 運動不足や肥満がある
  • 家族に大腸がんと診断された人がいる…遺伝的な要因がある可能性
  • 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を持っている
  • 大腸にポリープが見つかったことがある

 

大腸がんは早期の段階では自覚症状がほとんどありません。
そのため、リスク要因のある方は症状がなくても検診を受けることをおすすめします。

大腸がんの検査

大腸がんの検査方法は、以下のものがあります。

  • 便潜血検査
  • 注腸検査
  • CT検査
  • MRI検査
  • PET-CT検査
  • 大腸内視鏡検査

 

市区町村などの各自治体では、40歳以上の方に対して便潜血検査が実施されています。
しかし初期の大腸がんの場合、出血がないため、便潜血検査が陽性にならないことがあります。
便潜血検査だけでは、がんが見過ごされる可能性もゼロではありません。
そのため、40代以上の方で一度も大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けたことがない方は、便潜血検査だけではなく大腸内視鏡検査を受けることもおすすめです。

 

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸内視鏡検査は、大腸がんの診断に非常に有効な手段です。
下剤や腸管洗浄剤で大腸内の便を出してしまって腸管壁に付着した便綺麗に洗い流した後に、内視鏡を肛門から挿入し、直腸から盲腸まで大腸全体を観察します。
がんやポリープなどの病変の有無を確認する最も精密で信頼できる検査です。
病変が確認された場合はその場で組織を採取し、病理検査でがん細胞の有無を確認できますし、ポリープがあったらその場で切除することも可能です。
大腸がんの確定診断には、大腸内視鏡検査で採取した組織の病理検査が必須となっています。

大腸がんは早期発見・早期治療が重要

2人に1人ががんになる時代ですが、中でも大腸がんは患者数がもっとも多いがんになっています。

今回は、大腸がんで見られる自覚症状について説明しました。
ただし、これらの症状は大腸がん以外の原因でも起こり得るため、必ずしも大腸がんの存在を示しているわけではありません。
気になる症状がある場合は、早めに医師に相談し、適切な検査を受けることが重要です。

また、早期の大腸がんは無症状のことが多いため、定期的な検診を受けることもとても大切です。

 


関連記事

https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/colorectal_surgery/150/index.html
大腸がんの症状について | 国立がん研究センター 中央病院

 

https://medicalnote.jp/contents/180827-004-WW
大腸がんの自覚症状は進行してから現れることが多い | メディカルノート

 

https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/about.html
大腸がん(結腸がん・直腸がん)について|国立がん研究センター がん情報サービス

 

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
最新がん統計|国立がん研究センター がん統計

 

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000942181.pdf
全国がん登録 罹患数・率 報告

 

https://www.jcancer.jp/about_cancer_and_knowledge/%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9F%A5%E8%AD%98
大腸がんの基礎知識 | 日本対がん協会

 

https://ganmedi.jp/colorectal/features-risks/
大腸がんになりやすい人の特徴や原因リスクについて|がんメディ