食道粘膜下腫瘍とは、食道の粘膜の下に発生する腫瘍の総称です。
この記事では、食道粘膜下腫瘍について、その種類、症状、検査、および治療について詳しく説明します。
食道の粘膜下腫瘍とは粘膜の下に腫瘍がある状態を総称した呼び方です。したがって、粘膜の下にある粘膜下層や筋肉の層に発生し、腫瘍を形成する病気はすべて食道粘膜下腫瘍という形で発見される可能性があります。
食道粘膜下腫瘍を形成するものには、以下のような病気が含まれますが、大半は小さな平滑筋腫(筋肉から出た良性のコブのようなもの)であるとされていますが、頻度は低いものの悪性の病気も含まれていますので、注意が必要です。
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食道粘膜下腫瘍の大多数は小さい病変ですので無症状です。しかし、腫瘍が大きくなってくると、腫瘍の位置や大きさによって異なりますが、以下のような様々な症状が出る場合があります。
食道粘膜下腫瘍が大きくなって食道が狭くなると、食べ物や飲み物が通過できずに詰まることで摂取が困難になることがあります。
食道が狭くなった部位を食べ物や飲み物が通過できずに嘔吐してしまうことがあります。
嚥下が困難になることで、食欲が減退することがあります。
長期間にわたる食欲不振や嚥下困難により、体重が減少することがあります。
腫瘍が気道に圧迫することで、咳や喉の痛みが生じることがあります。
腫瘍部分を食べ物が通過するとき、胃酸の逆流によって刺激が強くなったときなどに痛みを感じることがあります。
腫瘍から出血することで吐血・下血・黒色便などが出ることがあり、結果として貧血を引き起こす場合があります。
食道粘膜下腫瘍の診断には、以下のような検査が行われます。
胃カメラを用いて食道内部から観察するだけでは、腫瘍の表面が正常な食道粘膜に覆われて盛り上がっているだけであるため、腫瘍本体が何なのか正確に診断することは困難です。表面の凹凸や色調を詳しく観察し、腫瘍の硬さを鉗子で押すことで確認したりして間接的な情報を総合して診断を絞り込んでいきます。可能な場合は、生検(組織の一部を採取する)を行い、病理組織検査によって診断確定を試みます。
内視鏡の先端から超音波が出る特殊な検査器具を使用して、腫瘍内部のエコー像からより精密な質的診断を行います。
超音波内視鏡の画像を確認しながら腫瘍本体に針を刺し、腫瘍内部の細胞を吸引して顕微鏡での病理検査を行う方法です。診断には最も有用ですが、腫瘍のサイズや性質によっては実施できない場合があります。
CTやMRIで腫瘍内部の性状、周囲臓器との関係、血流の豊富さなどを評価することで、より正確に診断するだけでなく、治療方針の決定にも利用します。
腫瘍が良性で小さい場合は切除などは不要でサイズや形の変化が出てこないか定期的に胃カメラで経過観察します。
精密検査の結果から悪性が疑われる場合、通過障害などの自覚症状がある場合などは、何らかの方法による切除が必要となります。
腫瘍のサイズがそれほど大きくなく食道内腔からみて浅い層に留まる場合は内視鏡(胃カメラ)での切除が可能です。
腫瘍が大きかったり食道内腔からみて深い層に及んでいる場合や、リンパ節などへの転移が疑われる場合、腫瘍を周囲の組織を含めて完全に切除する外科的手術が必要となります。
他の臓器への転移を認める場合は全身疾患と判断されますので、化学療法などの薬物治療が選択されます。
以上が、食道粘膜下腫瘍についての基本的な情報です。
早期発見と適切な治療を受けるために、定期的に検査を受けて医師のアドバイスをしっかり聞いておくことが重要です。
食道粘膜下腫瘍の写真(小さな平滑筋腫の2例)