gastric malignant lymphoma
胃悪性リンパ腫とは

胃悪性リンパ腫とは

医療法人香誠会 えぞえ消化器内視鏡クリニック

胃悪性リンパ腫について

悪性リンパ腫とは、リンパ組織に発生する悪性腫瘍の総称です。悪性リンパ腫は全身に起こりうる病気ですが、消化管の中では胃が好発部位とされています。悪性リンパ腫はいくつかの病型に分類されますが、胃に発生する悪性リンパ腫で最も多いのは「胃MALT(マルト)リンパ腫」、続いて多いのが「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫」ですが、この2つのタイプがほとんどを占めています。

この記事では、胃悪性リンパ腫の中で最も頻度が高い胃MALTリンパ腫と胃びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫について、それぞれの特徴、症状、検査、および治療について詳しく説明します。

胃MALTリンパ腫の特徴

MALTは「mucosa-associated lymphoid tissue(粘膜関連リンパ組織)」の略で、その名のごとく粘膜や腺に関連するリンパ組織に発生する低悪性度のリンパ腫をMALTリンパ腫と言います。
MALTリンパ腫は、消化管、扁桃腺、肺、甲状腺、唾液腺などに発生しますが、発生頻度としては消化管が最も多く約半数(50%)を占めており、さらにそのうちの約80~90%が胃に発生します。胃に発生する悪性リンパ腫の約50%はこのタイプです。
胃MALTリンパ腫の約90%はヘリコバクター・ピロリ菌感染を伴っており、ピロリ菌感染に伴う炎症(サイトカイン刺激)によってB細胞が増殖し、染色体異常の頻度が高くなることで腫瘍化していく機序が発生要因と考えられています。

胃MALTリンパ腫の症状

胃MALTリンパ腫はわずかに陥凹した形を取る病変が多く、高さ(体積)を有する病変が少ないため、基本的には無症状です。
健康診断や人間ドックでの胃カメラや、別の目的(胃の痛みの原因精査など)で受けた胃カメラで偶然に発見されることがほとんどです。

胃MALTリンパ腫の検査

胃MALTリンパ腫の診断には、以下のような検査が必要となります。

 

内視鏡検査

胃MALTリンパ腫は多彩な形態を取ることが知られています。
早期胃がんと区別が付きにくい陥凹した所見、凸凹が目立つ顆粒状所見、石畳のような敷石状所見、びらんが多発する所見、白っぽく褪色した色調、粘膜下腫瘍のように盛り上がった所見など、様々な形態を示します。
早期胃がんとの区別が付きにくかったり、内視鏡検査だけでは診断確定が難しい場合もありますので、基本的には生検組織を採取して病理組織検査を行うことになります。

 

病理組織検査

内視鏡検査の際に病変の一部を鉗子を使って採取し、病理組織検査に提出します。
病理組織検査を行うことで胃MALTリンパ腫に特徴的な所見が確認できれば診断が確定できます。
治療後の効果判定を行う際も、生検組織の病理組織検査を行って腫瘍細胞が消失したかどうか評価します。

 

CTなどの画像検査

病気の進行度(臨床病期)を評価するために、CTなどの画像検査が行われます。
消化管に限局しているかどうか、どのレベルのリンパ節まで広がっているか、他の隣接する臓器に浸潤していないか、遠隔臓器への進展がないか、などを評価し、臨床病期Ⅰ~Ⅳ期に分類して治療方針を決定します。

胃MALTリンパ腫の治療

ピロリ菌が陽性の胃MALTリンパ腫に対しては除菌治療が第1選択となっています。除菌による寛解率(腫瘍が消失する確率)は80%以上です。ただ、ピロリ菌が陰性であって除菌治療の薬を服用することで寛解状態に至る例も報告されており、除菌治療は選択枝となります。

除菌療法に反応しない場合は、臨床病期によって治療は異なりますが、外科手術、放射線治療、抗がん剤を用いた化学療法などが行われることもあります。

 


 

胃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の特徴

胃に発生する悪性リンパ腫の中では30~40%を占め、胃MALTリンパ腫に次いで頻度が高いタイプです。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は、MALTリンパ腫と比較するとボリュームがある腫瘤(かたまり)を形成する傾向が強く、進行胃がんに似た形態を取ることが多いのが特徴です。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の中には、MALTリンパ腫や他のタイプのリンパ腫の性質が変わってこのタイプになったものもあるため、臨床経過や内視鏡所見は多彩です。

胃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の症状

胃MALTリンパ腫と比べると大きい病変や潰瘍を形成する病変が多いのですが、胃がんと同様に自覚症状がないことが大半で、健康診断や人間ドックでの胃カメラや、別の目的(胃の痛みの原因精査など)で受けた胃カメラで偶然に発見されることが最も多いです。

しかし、少量の出血を繰り返して貧血を契機に発見されたり、病変が大きくなって通過障害や胃もたれを自覚する場合もあります。

胃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の検査

胃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断には、以下のような検査が必要となります。

 

内視鏡検査

進行胃がんとの鑑別が必要となるような潰瘍を伴う病変、粘膜下腫瘍のように盛り上がった病変、耳たぶのような形をした病変など、様々な形態を示しますが、胃がんとの鑑別で最も重要な所見は「病変の柔らかさ」です。胃がんと比べると病変自体が柔らかく、内視鏡から入れる空気量が変われば形が変わるという特徴があります。
内視鏡検査だけでは診断確定が難しい場合もありますので、基本的には生検組織を採取して病理組織検査を行うことになります。

 

病理組織検査

内視鏡検査の際に病変の一部を鉗子を使って採取し、病理組織検査に提出します。
病理組織検査を行うことで胃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に特徴的な所見が確認できれば診断が確定できます。
治療後の効果判定を行う際も、生検組織の病理組織検査を行って腫瘍細胞の活動性を評価することもあります。

 

CTなどの画像検査

病気の進行度(臨床病期)を評価するために、CTなどの画像検査が行われます。
消化管に限局しているかどうか、どのレベルのリンパ節まで広がっているか、他の隣接する臓器に浸潤していないか、遠隔臓器への進展がないか、などを評価し、臨床病期Ⅰ~Ⅳ期に分類して治療方針を決定します。

胃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療

胃びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の根治を目指すための治療としては、抗がん薬を用いた薬物療法(化学免疫療法)が第1選択となっています。
外科手術や放射線治療は、出血がひどい場合や穿孔(病変に穴が空いてしまうこと)のリスクが高い場合などには考慮されることもあります。

以上が、胃悪性リンパ腫についての基本的な情報です。
胃悪性リンパ腫の疑いがあると診断された場合は、医師のアドバイスに従い、適切な精密検査や治療を受けるようにしましょう。

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