40代、50代になると、自分の身体の健康について気になってくる人も多いのではないでしょうか?
中でも胃がんは、男性の10人に1人、女性では21人に1人の割合で発症すると言われており、意外と身近な病気といえるでしょう。
胃がんを早期発見するためには、胃内視鏡検査やバリウム検査を定期的に受けることが重要です。ここでは、胃内視鏡検査前日の過ごし方、検査を受ける頻度、バリウム検査との違いについて解説していますので、ご参照ください。
<この記事で分かること>
- 胃内視鏡検査を受ける頻度
- 内視鏡検査を受ける前日の過ごし方
- 内視鏡検査とバリウム検査の違い
- 内視鏡検査とバリウム検査どちらを受ければよいのか
胃内視鏡検査を受ける頻度は50歳以上で2年に1回
厚生労働省が公表している「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」によると、胃がん検診としての胃内視鏡検査(あるいはバリウム検査)を受けるべき頻度は50歳以上の人で2年に1回が提唱されています。
ただし、胃炎や胃潰瘍、ピロリ菌の除菌後など、胃に何かしらの病気を持つ人は、1年に1回受けておいた方がいい場合もありますし、リスクが低い方については3年に1回程度でも問題ない場合もありますので、主治医から指示される間隔で検査を受けましょう。
胃内視鏡検査を受ける前日の過ごし方
胃内視鏡検査を受ける前日は、どのように過ごすとよいのか解説します。
ポイントは、以下の3つです。
- 食事は脂っこい物は避けて、夜9時までに済ませること
- 激しい運動やアルコールは避けましょう
- 定期的に飲んでいる薬は服用可能
食事は脂っこい物は避けて、夜9時までに済ませること
胃内視鏡検査前日の夕食として、脂っこい物は避けるようにしましょう。
脂っこい物を食べていると、検査の際にまだ胃の粘膜面に脂が付着している事がありますので、精密な検査を受けるためには避けておきましょう。
また、食事は夜の9時までに済ませることが大切です。
胃内視鏡検査では、胃の内容物が空っぽになっていないと詳細な観察ができなかったり、消化されていない食物が多く残っている場合は検査自体ができなかったりする可能性があります。そのため、食べ物を消化する時間を十分とるために、最終の食事時間は夜9時であると覚えておきましょう。
また、脂っこい物ではなければ食べる物に制約はありませんが、アルコール類は胃が荒れることがあったり脱水を起こしやすかったりするため、前日の飲酒は控えておきましょう。消化が良くない、胃もたれがあるという方は、消化が良さそうな物を食べ過ぎない程度に摂っておくと安心です。
ちなみに、水分摂取に制限はありません。検査当日の1時間前までは水分も摂っていただいて結構です。
激しい運動は避けましょう
激しい運動は、胃に負担がかかるため、胃内視鏡検査の前日は控えましょう。
激しい運動することで汗をかくと、脱水の危険性も考えられます。脱水で気分不良などが出てしまうと翌日の検査に支障を来す場合もありますので、
運動と同様に、大量の汗をかくサウナも控えておきましょう。
定期的に飲んでいる薬は服用可能
胃内視鏡検査の前日は、普段定期的に飲んでいる薬は、基本的にすべて服用可能です。
抗血栓薬(血液をサラサラにして固まりにくくする薬)も胃内視鏡検査の際は休薬することなく受けていただくことが可能です。
(※抗血栓薬を休薬していなくても生検までは可能とされています)
ただし、検査当日の朝は、糖尿病の薬(内服薬やインシュリン)を服用してしまうと絶食に伴う低血糖発作が起こるリスクが高くなりますので、糖尿病の薬に関しては必ず休薬が必要となりますのでご注意ください。
一方で、降圧剤(高血圧の薬)を服用せずに検査に望むと緊張もあって血圧がかなり上昇するリスクがありますので、高血圧の薬は検査当日の朝も早い時間に服用していただいています。
胃内視鏡には2種類の方法がある
胃内視鏡検査には、口からカメラを挿入する方法と鼻から挿入する方法の2種類あります。
それぞれの違いについて、以下の表をご参照ください。
経口内視鏡 | 経鼻内視鏡 | |
特徴 |
• 口からカメラを挿入する • 昔から行われている検査でオーソドックス • カメラが太く胃内の様子が細かく分かる |
• 鼻からカメラを挿入する • 口からのカメラと比較すると細い • 観察に時間がかかることがある |
メリット | • 病変部位が見つかったとき拡大観察など精密に観察することができる • カメラが太いため、胃内の粘膜面を綺麗に洗浄して観察できる |
• 嘔吐反射が起きにくい • 検査中に会話ができる • 鎮静剤を使わない場合、ネイルなどを外す必要がない |
デメリット | • 鎮静剤を使用しないと嘔吐反射が出やすい • 鎮静剤を使用するため、病院までの交通手段が限定される(車、バイク、自転車の運転は不可) • 鎮静中の安全確保のため、検査中のモニタリングが必要(ネイルが不可となる) |
• 鼻の中が狭い人は検査できない • 鼻の中を傷つけ出血する可能性がある • 鼻の痛みがかなり強い場合がある • 胃粘膜に粘液が付着している場合、洗浄が十分できないことが多い |
当院では口から挿入する経口内視鏡検査のみを行っています
辛いイメージがつきまとう口からの胃カメラですが、
(1)解像度が高い
(2)拡大観察で正確な診断ができる
(3)短時間で胃粘膜を十分洗浄して観察できる
など、経鼻内視鏡に対する揺るぎない優位性も多く精密検査に適した検査です。
当院では、経口内視鏡検査のメリットを重要視しておりますので、経口検査のデメリットを排除できるように、全ての患者さんに鎮静剤を使用して経口内視鏡検査を受けていただいております。
鎮静剤を適切に使用して眠った状態で検査を受けていただけますので、苦痛を感じることはほとんどありません。鼻からの胃カメラでも痛みや苦痛が強かった、鼻血が出て困った、精密検査を受けたい、寝ている間に終わらせたい、という方は、当院での経口内視鏡検査をお勧めします。
現在当院では、鎮静剤を使用した経口内視鏡検査のみを行っています。
当院で検査を受ける方全員に、最も苦痛が少なく、精密な検査を提供するためのこだわりです。
詳しくは以下のブログをご覧ください。
「なぜ鎮静剤を使った胃カメラしかしていないのか?」
https://www.ezoe-clinic.com/topics/3114/
胃内視鏡検査とバリウム検査の違いとは?
胃の検査の代表的な方法である、胃内視鏡検査とバリウム検査の違いについて解説しますので、以下の表をご参照ください。
胃内視鏡検査 | バリウム検査 | |
特徴 | 鼻や口からカメラを挿入し、胃内を直接確認できる | 造影剤を飲み、レントゲン撮影を行う方法 |
メリット | • 病変部位が確認できた場合は、その場で組織を採取できる • 色調の変化のみでしか発見できないような小さな異常も見つけることが出来る |
• 内視鏡と比較すると嘔吐反射がでることはない • 費用が抑えられる • 胃全体の形が分かる • 検査のハードルがやや低い |
デメリット | • 検査中の嘔吐反射が苦痛というイメージがつきまとう • 麻酔を使用するため車、バイク、自転車での移動ができない • バリウム検査と比較すると費用がかかる |
• 病変の発見頻度にムラがある • 平坦な病変は見つけにくい • 異常があれば胃カメラを受ける必要が出てくる • 検査後バリウムの排泄がうまくいかないと腹痛を起こす可能性がある |
以下には、バリウム検査について詳しく解説していますので、ご参照ください。
バリウム検査とは造影剤を飲んでレントゲンを撮る検査を指す
バリウム検査とは、造影剤と発泡剤(胃の中を空気で膨らます薬)を飲み、胃全体に造影剤が行き渡るように身体を動かしながらレントゲン撮影を行う方法です。
発泡剤で胃を膨らませて撮影するため、げっぷを我慢しなければなりません。げっぷが出てしまうと、追加でバリウムや発泡剤を飲んだり、最初から写真を撮り直したりする必要が出てくるため、検査時間が長くなり患者さんの苦痛になることもあります。
バリウム検査の3つのメリット
バリウム検査には、以下の3つのメリットがあります。
- 検査の苦痛が少ない(と言われている)
- 胃全体の形が分かる
- 胃内視鏡と比較すると費用が抑えられる
それぞれについて、詳しく解説します。
検査の苦痛が少ない
内視鏡検査は嘔吐反射が出やすいため、苦痛が強いというイメージを持つ人が多いでしょう。しかしバリウム検査は造影剤を飲んでレントゲン撮影をするため、嘔吐反射が出にくく、検査自体の負担が少ないといえます。
ただし、人によっては、造影剤と発泡剤を飲むことでげっぷを我慢するのが大変、造影剤の味がすごく苦手で吐いてしまったという人もいます。
胃全体の形が分かる
バリウム検査は、造影剤を胃全体に行き渡らせてレントゲン撮影するため、外から見た胃の形がはっきり分かります。
そのため、バリウム検査で胃全体の形を確認することで、胃全体の形が変化するような病気は特定しやすいといえるでしょう。
胃内視鏡と比較すると費用が抑えられる
バリウム検査と胃内視鏡検査の検診費用を比較してみましょう。
バリウム検査 | 5,000円~15,000円 |
胃内視鏡検査 | 15,000円~20,000円 |
およその目安ですが、バリウム検査の方が費用が抑えられるのが一般的です。
バリウム検査の4つのデメリット
バリウム検査のデメリットは、以下の4つが挙げられます。
- 病変部位の組織が採取できない
- 凹凸がある病変しか発見できない
- バリウム検査で異常が見つかると内視鏡検査を受けることになる
- 便秘の人は、バリウムが排泄されないと腸閉塞を起こす危険性がある
それぞれについて、詳しく解説します。
病変部位の組織が採取できない
バリウム検査はレントゲン撮影をすることで胃内の様子を確認するため、直接胃内の組織に触れることはできません。
そのため病変を発見しても、組織を採取して詳しく調べられないのがデメリットといえるでしょう。
凹凸がある病変しか発見できない
バリウム検査はシルエットで評価するため、凹凸がある病変は確認できますが、色調だけの変化しかないような病変(例えば未分化型胃がん [白っぽい色の平坦ながん] など)は指摘することができません。
バリウム検査で異常が見つかると内視鏡を受けることになる
バリウム検査で異常な所見が発見された場合は、その部位を内視鏡検査で直接観察したり、組織を採取したりする必要が出てきます。いわゆる精密検査です。結局、病変の診断を確定するためには内視鏡検査が必要になるのです。
バリウム検査をして、もしも異常が見つかった場合はさらに内視鏡検査も受けなければならないため、ダブルで検査を受けないといけないということになります。
便秘の人はバリウムが排泄されないと腸閉塞を起こす危険性がある
バリウム検査後は、便が出やすいように下剤を飲むことが多いでしょう。
バリウムは腸の中に留まると硬くなり、排出されにくくなってしまいます。そのため、なるべく早く排出を促すために下剤が処方されるのです。
なかにはバリウムが詰まって腸閉塞を起こしたり、バリウムが盲腸や大腸憩室に入り込んで虫垂炎や大腸憩室炎を起こしたりする人もいるため、検査後の排便状況に注意が必要です。
元々便秘体質の人は、バリウム検査をする前に医師に相談しましょう。
内視鏡検査とバリウム検査どっちを受けるか迷った人はこちらを確認しよう
内視鏡検査とバリウム検査は、どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらを受けようか悩む人も多いのではないでしょうか。
ここでは、内視鏡かバリウム、どちらを受けるか迷った人が判断しやすいように、それぞれの検査をおすすめするパターンを紹介します。
当てはまっている方の検査を受けましょう。
内視鏡検査がおすすめな人
内視鏡検査がおすすめな人は、以下の通りです。
- 胃の痛みやもたれ感、酸っぱいものが上がってくる感じなどの症状がある人
- ピロリ菌がいる人や除菌治療後の人
- 胃がんになった家族がいる人
- 胃の状態を詳しく知りたい人
内視鏡は胃の状態を直接確認できること、病変部位があればその場で組織を採取して詳しく調べられるのが最大のメリットといえます。
上記に当てはまる人は、内視鏡検査がおすすめです。
当院では苦痛のない内視鏡検査を受けていただくことを至上命題としております。そのために鎮静剤を使用しておりますので、胃内視鏡検査をご希望の方で不安な方は一度受診してお話を聞いてみられてもいいと思います。
バリウム検査がおすすめな人
バリウム検査がおすすめな人は、以下の通りです。
- 検査費用を抑えたい人
- 胃の症状がない人
- 家族に胃がんになった人がいない
- 40歳未満
- 鎮静剤を使用するのが不安
- 鎮静剤を使いたくない(ネイルを取れない、など)
胃に症状はないが、念のため調べておきたい人や、胃がんのリスクが低い40歳未満の人などはバリウム検査でも問題ないと思います。
ただし、精密検査については胃内視鏡検査しかないということをご理解ください。
まとめ:自分の状況に応じて適切な検査を受けよう
胃内視鏡検査の前日は、夜9時までに食事を済ませることが重要です。
食事内容に厳密な制限はありませんが、飲み過ぎ、食べ過ぎ、アルコールの摂取などは控えるようにしましょう。
また、バリウム検査と内視鏡検査にはそれぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。自分の状況に合った検査を受けて、病気を早期に発見し、健康を維持していきましょう。
参考サイト
・胃がん・乳がん検診に関する指針の改定について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000114067.pdf
・鎮静剤は使用すべき?胃カメラ(胃内視鏡検査)の費用・受け方のコツ|マイシグナル
https://misignal.jp/article/gastroscope/#i-21
・内視鏡検査について|国立がん研究センター東病院
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/endoscopy/020/030/index.html
・胃部検査(バリウム・胃カメラ・ABC検査)
https://www.t-m-c.org/?page_id=5836
・内視鏡検査|三嶋内科病院
https://mishimanaika.jp/endoscope.html
・胃がん検診費用の目安|検査ごとの違いや保険適用・助成制度について
https://www.docknet.jp/media/cancer-20/
・胃がん検診を受けようと思っていますが、バリウムと胃カメラ、どちらの方がよいですか?|日本消化器内視鏡学会
https://www.jges.net/citizen/faq/general_04
・胃|国立がん研究センターがん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/5_stomach.html