下痢の原因
身体は元気なのに下痢が続く場合には、何が原因になるのでしょうか?下痢の原因はいろいろあります。
食べ物や飲み物
食べ過ぎ飲み過ぎには注意しましょう。胃や腸がうまく働かないため、下痢の原因になってしまいます。
ウイルスや細菌
いわゆる「食中毒」のことです。食べ物や飲み物に入っているウイルスや細菌によって、腹痛や発熱を伴う下痢になってしまいます。
薬
薬も下痢の原因のひとつです。なかでも抗生物質は、腸の中の良い細菌も殺してしまうことがあります。良い細菌が少なくなることで下痢が起こります。
胃腸の病気
病気になっていても、自分では元気だと思い込み、気づかない場合があるので注意しましょう。例えば、過敏性腸症候群という病気は、ストレスや食べ物によって、腸が敏感になって、下痢になりやすいのが特徴です。
それでは下痢の症状や対処法、検査や治療について詳しく説明していきます。
下痢の症状
下痢とは、便が水分を多く含んで固まらない状態です。そのため、お腹が痛くなったり、トイレに何度も行きたくなったりします。
食べ物は、口から入って食道、胃、小腸、大腸という管の中を通って消化されて、最後に肛門から出てきます。このとき、腸の中で水分が吸収されるのですが、水分の吸収がうまくいかなかったり、腸の中で水分が増えたりすると、便が水っぽくなった状態が下痢です。
便の色やにおい、量や回数などは、下痢の原因によって異なります。下痢が長く続くと、電解質の不足、栄養不良、脱水症状などの合併症が起こる可能性があるため注意しましょう。
下痢の種類
下痢の種類は、様々な分類の仕方がありますが、一般的には、症状の持続期間や原因によって分けられます。
症状の持続期間による分類
症状の持続期間によって、急性下痢と慢性下痢に分けられます。
- 急性下痢
2週間以内に治まる下痢です。食べ物や飲み物、ストレス、感染症などが原因になります。食生活の乱れに注意しましょう。
- 慢性下痢
1カ月以上続く下痢です。腸の病気やアレルギー、薬などが原因になります。
原因による分類
下痢が起こるメカニズムによって、以下の4つに分類されます。下痢のメカニズムとは、腸内の水分の吸収や分泌がどのように変化するかということです。
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- 運動亢進性下痢(ぜん動運動性下痢)
ぜん動運動とは、腸が伸びたり縮んだりして食物を肛門方向に運ぶ働きのことです。腸の動きが過剰になる(亢進する)ため、水分の吸収が十分に行われないため起こる下痢です。
例えば、ストレスや冷えなどで自律神経のバランスが崩れた場合や、過度の飲酒、不規則な生活などが原因で腸管のぜん動運動が活発になります。
- 分泌性下痢
腸管から水分や電解質が過剰に分泌されるため、水分の吸収が追いつかないために起こる下痢です。例えば、食中毒や感染症などで腸管に毒素が作用した場合や、下剤の副作用などが原因になります。便中の水分が多くなり、下痢が起こります。
食物アレルギーなども原因になることがあります。
- 浸透圧性下痢
腸内に水分を引き寄せる物質が多く存在することで、水分の吸収が妨げられる下痢です。例えば、乳糖不耐症の人が牛乳を飲んだ場合や、人工甘味料を多く含む食品を摂った場合などが原因になります。また、酸化マグネシウムなどの下剤を使用した場合にも起こります。
日常のなかの食生活が原因になります。お酒や脂っこい食べ物などを控えましょう。
- 滲出性下痢
腸管に炎症や潰瘍があるため、血液や粘液などが腸内に滲み出ることで便の水分量が増えて起こる下痢です。例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患や、腸管出血性大腸菌などの感染症が原因になります。 がんも下痢の原因となることがあります。
- 運動亢進性下痢(ぜん動運動性下痢)
下痢になったときの対処法
下痢になった際の対処法は、下痢の種類や原因によって異なります。下痢の症状がひどい場合や、熱や吐き気、血便などの症状を伴う場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。
基本的な対処法は以下の通りです。
急性下痢の場合
激しい下痢は脱水症状を引き起こす可能性があるので、水分を十分に摂取することが重要です。冷たい飲み物は避け、湯冷ましや薄めの番茶、麦茶、ぬるいミネラルウォーターなどを少しずつ、頻繁に飲むことを心掛けましょう。
胃腸を休めるために、消化の良い食事を選びます。例えば、おかゆ、すりおろしたリンゴ、野菜スープ、脂肪分の少ない鶏のささみや白身魚、卵を使った料理などがおすすめです。
慢性下痢の場合
慢性下痢は他の病気の兆候の可能性があるため、医師の診断を受けることが重要です。牛乳など特定の食品を摂取すると下痢になる場合は、それらの食品を避けるようにしましょう。
消化が良く栄養価の高い食材を選び、腸への刺激が少ない食事にすることが効果的です。例えば、柔らかいご飯、うどん、さといも、じゃがいも、卵、鶏のささみ、赤身の牛肉、白身魚、豆腐、納豆、バナナ、リンゴ、ヨーグルトなどが良いでしょう。
市販薬の使用について
止瀉薬(ししゃやく)は下痢を止める効果があるものの、食中毒など感染性の下痢の場合は使用を控えましょう。病原菌を体内に留めてしまい、症状を悪化させるかもしれません。
酪酸菌、乳酸菌、ビフィズス菌などが含まれた整腸薬は、腸内のバランスを整える効果があるため有効です。また、漢方薬も選択肢の一つになります。
食事と注意点
食物繊維や脂質の少ない食品を柔らかく調理し、消化の良い食べ物を選びます。脂っこい食品は避けましょう。刺激の強い食品(香辛料、甘味、塩味、酸味、嗜好飲料など)は胃酸の分泌を高めるため、避けてください。
脱水症状を防ぐためには水分と電解質の補給が重要です。スポーツ飲料などが適していますが、脂肪分が多い牛乳は避けましょう。胃腸に優しい食事を選び、濃い味付けや柑橘類を避けることが重要です。脂質や糖分の多い食品、アルコールや香辛料の多い食品は避けるようにしましょう。
医療機関の受診
長期間続く下痢や、経験したことのない激しい下痢、脱水症状や高熱、吐き気、嘔吐、強い腹痛、血や粘膜が混じった便などがある場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
下痢が関わる消化器の病気
同じ「下痢」の症状が現れる消化器の病気でも、原因や特徴は様々です。早期発見・早期治療が重要な疾患も多いため、気になる症状があれば迷わず医師に相談しましょう。
主な疾患とその特徴について、紹介します。
過敏性腸症候群 (IBS)
【特徴】
精神的ストレスや情緒不安定が主な要因で、慢性的な下痢や便秘が起こります。
【症状】
下痢に加えて、腹痛、便秘が主な症状です。症状は何週間も続くことも自然に治まることもあります。
潰瘍性大腸炎
【特徴】
大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、粘液や血液の混じった便が特徴です。
【症状】
炎症が強い場合は下痢に加えて、腹痛、発熱を伴うことがありますが、炎症の範囲が狭い場合や炎症所見が弱い場合は症状がない場合もあります。原因は不明ですが、自己免疫反応の異常が関係していると考えられています。
大腸ポリープ
【特徴】
大腸の内側からイボのように突き出た病変のことです。多くは良性ですが、放置すると大腸がんに進行するものや、悪性のものもあります。
【症状】
初期には自覚症状がほぼありません。大きくなると下痢や便秘、血便などが見られることがあります。
食中毒や感染症
【特徴】
O-157、ノロウイルス、サルモネラ菌などによる感染で起こる急性の下痢です。
【症状】
下痢に加えて、嘔吐、吐き気、発熱、血便、腹痛、脱水などがあります。症状は病原体によって異なります。
乳糖不耐症、消化管アレルギー
【特徴】
乳糖不耐症は、乳糖を分解する消化酵素が少ないことによって起こります。消化管アレルギーは、牛乳や卵、小麦など特定の食品に対するアレルギー反応です。
【症状】
下痢に加えて腹痛、嘔吐が起こる場合もあります。
虚血性腸炎
【特徴】
大腸への血流が何らかの原因によって阻害されることにより、急に生じる粘膜障害と強い炎症所見です。
【症状】
突然起こる腹痛、下痢、血便が特徴的です。
大腸がん
【特徴】
進行した大腸がんは、大腸の管腔が狭くなり、便秘と下痢を繰り返すことがあります。
【症状】
下痢に加えて、便秘、血便がみられることがあります。
慢性膵炎
【特徴】
膵臓からの消化酵素の分泌が低下することで起こる消化不良による下痢が特徴です。
【症状】
下痢に加えて、体重減少、腹痛、脂肪便などが見られることがあります。
下痢の検査と治療法
まずは問診で、便の状態や回数、食生活や生活習慣、下痢以外の症状などを確認します。内服歴や渡航歴、生活環境の変化、家族の腹部症状の有無なども大切な情報となります。問診の内容によって必要な検査や治療が変わってきますので、適当に答えず、できるだけ正確に答えるようにしてください。
下痢の検査
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- 血液検査
- 腹部レントゲン
- 便検査
- 腹部エコー検査
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
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症状の経過や疑われる疾患によって、必要と判断される検査を行いして原因を見つけていきます。
血液検査
脱水や炎症反応の確認、場合によって血清アミラーゼや栄養状態などの評価をします。
腹部レントゲン、CT検査
レントゲンを使って、腸管内の異常なガス像などがないか確認します。
便検査
感染症が疑われる場合には、便培養検査にて原因菌の検索を行います。
腹部エコー検査
肝臓、腎臓、膵臓、胆のうなどをすべてチェックします。また、腹水や腸管の炎症による浮腫なども確認できます。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
慢性的な下痢や、出血がある場合に行います。大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎などがないかどうかは自他覚所見からは判断できません。直接カメラで見ないと診断できないので大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が必要となります。
下痢の治療法
下痢の治療方法は、原因によって異なります。
食生活が原因で起こっている下痢は、数日で治ることが多いため治療は不要です。安静にして、消化の良いものと水分を摂るように心がけましょう。「出血がある」「食事が摂れない」など症状がひどい場合や、精密検査が必要な場合は入院が必要になることもあります。
急性下痢では、脱水を防ぐために十分な水分補給が重要です。水分が摂れなかったり、脱水が酷かったりする場合には、点滴治療が必要になることもあります。
感染症や食中毒の場合には、病原体に効果の期待できる抗生剤などを処方される場合があります。止痢剤は、原因菌の排出を妨げるため、基本的には処方しません。必要に応じて整腸剤や鎮痛剤が処方されることがあります。
また、慢性下痢では原因となる病気次第ではより専門的な治療が必要となる場合があります。