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便潜血検査1回だけ陽性でも大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をおすすめする理由

便潜血検査とは、便に微量の血液が混じっているか調べるものです。日本では2日間、検査を行う方法が一般的です。もし、1回だけ陽性だった場合にはどうすればいいのでしょうか?

陽性が出た場合には、1回であっても身体の中に病気が潜んでいるサインかもしれません。病気の早期発見のチャンスを逃さないためにも、大腸内視鏡検査でさらに詳しく調べることが重要です。

ここでは、便潜血検査で1回だけ陽性であっても、大腸内視鏡検査を受けた方が良い理由を分かりやすく説明します。

 

便潜血検査とは

便潜血検査は、大腸がんの早期発見に役に立つ検査です。大腸や肛門などの下部消化管で出血が起きると、その血液が便に混ざります。出血量が多い場合は、便が赤くなったり、暗い色をしたりして目で見ても血が混じっていることがわかります。

しかし、出血量が少ない場合は、便に血が混じっていても見た目では判別ができません。そんな時に便潜血検査が役立ちます。この検査は、便に血液が混入しているかどうか、つまり下部消化管からの出血があるかどうかを調べるために行われます。

厚生労働省は、大腸がんのリスクが高まる年齢を考慮して、40歳を過ぎた方に対して毎年の便潜血検査を受けることを勧めています。

 

検査の方法

便潜血検査は専用スティックで便を採取し、それを検査機関に提出します。自宅で簡単にできる、手軽な検査方法です。食べ物や薬の影響を受けずに行えるため、特別な食事制限や準備は必要ありません。

検査キットの使い方を事前に確認しておくと、当日スムーズに採取できます。検査当日は、キットに含まれる道具を使って、便の表面から適量のサンプルを取ってください。便全体から均等に採ることが重要ですが、多くとる必要はありません。

この検査では、便に含まれるヘモグロビンというタンパク質を検出します。タンパク質は高温で変質するため、キットにはこれを防ぐ成分が含まれていることがあります。

採取した後は、提出するまでの間、暗く涼しい場所に保管しないといけません。暑い時期は、温度の影響を避けるために、冷蔵庫や保冷剤を使用して保管すると良いでしょう。食品と一緒に置くのが気になる場合は、発泡スチロールや保冷バッグを利用すると便利です。

 

2回検査を行う理由

日本では、この検査をより精度高く行うために「2日法」という方法が一般的です。これは、2日連続で便のサンプルを採取し、それぞれを検査する方法になります。

2回も便を採るのは面倒かもしれませんが、それには理由があります。大腸がんが身体に存在していても、毎日出血するわけではありません。そのため、1回の検査だけでは潜血を見逃してしまう可能性があるのです。2日連続で検査を行うことで、検出率を高め、より確実に病気の兆候を捉えられます。

精度を上げるために、単に採取回数を増やすことが良いわけではありません。たとえば、3日連続で採取する「3日法」では、潜血を検出できる可能性が高まります。その一方で健康な人でも陽性反応が出る「偽陽性」のリスクも高まってしまいます。これにより、実際には病気でないにもかかわらず、病気があると誤って判断される可能性が増えてしまうのです。この2つのバランスを考慮して、日本では2日法が選ばれています。

 

便潜血検査の精度

便潜血検査には、大腸がんを見つけるための「免疫法」と「化学法」という2つの方法があります。日本で行われる便潜血検査では、主に免疫法が用いられています。特定のタンパク質を検出することで便中の微量な血液を特定し、食事の影響を受けにくいということが特徴です。

免疫法は、大腸がんが存在する場合に検査で陽性を示す確率が約30%から93%の範囲になります。この数値は、がんの進行具合や検査をどのように行うかによって異なります。検査結果が陽性の場合はさらに詳しい検査を受けることが大切です。

 

検査の有効性

便潜血検査に関する研究では、欧米で行われている化学法を使った検査でも大腸がんの死亡リスクを下げる効果があることがわかりました。

検査を毎年受けた場合に、死亡リスクが約33%減少し、2年に1回受けた場合でも13~21%の減少が見られたそうです。日本で主流の免疫法を用いた場合では、1日法による検診でも毎年受けることで死亡リスクが60%も減ると報告されています。

参考元:国立研究開発法人国立がん研究センター『大腸がん検診

 

便潜血検査の特徴

便潜血検査は、他の検診方法と比べて、副作用や予期せぬ問題が起こるリスクが非常に低いことが大きなメリットです。検査前に特定の食べ物を避けたり、薬を控えたりする必要がありません。

ただし、検査結果は完璧ではありません。実際にはがんがあるのに検査結果が陰性と出る「偽陰性」や、がんがないのに陽性と判定されてしまう「偽陽性」があります。偽陰性はがんの発見が遅れる原因になり、偽陽性は不要な心配やさらなる検査のストレスを引き起こす可能性があります。陽性の場合は必ず追加の検査を受けることが大切です。

 

 

大腸がん以外でも便潜血検査は陽性になる

便潜血検査で陽性反応が出る場合、それは消化器系のどこかに問題があるかもしれません。

出血の原因となる病気は、炎症や潰瘍、ポリープ、がん、痔などが考えられます。このうち、痔や大腸ポリープが便潜血検査で陽性となることが比較的多い病気です。

 

炎症

腸に炎症が起きることを「炎症性腸疾患」と呼びます。消化器系の炎症は、腸管の壁が損傷を受けることで出血を起こすことがあります。

炎症の原因が明らかな場合(細菌やウイルスによる感染性腸炎、薬の副作用による薬剤性腸炎、血流が悪くなることによる虚血性腸炎など)、それらを総称して「特異的炎症性腸疾患」と呼びます。

一方、炎症を引き起こしている具体的な原因がわからない場合は「非特異的炎症性腸疾患」と総称され、潰瘍性大腸炎やクローン病もこちらに分類されます。

 

ポリープ

消化管にできたポリープは、その表面が傷ついたり炎症を起こしたりすることで出血を引き起こすことがあります。

ポリープとは、皮膚や粘膜から生える、小さなキノコのような形をした腫れ物のことです。これは特定の病気を示すわけではなく、茎があって球形になっている腫瘍の一般的な呼び名になります。身体のさまざまな部分にでき、多くは良性ですが、中にはがんに進行する可能性があるものもありますので注意しましょう。

 

肛門にできる痔が破裂したり肛門が避けたり(裂肛)すると出血するため、結果として便潜血検査で陽性反応が出ることがあります。出血が少量で肛門のすこし奥が傷ついた場合には痛みを感じないため、出血したことに気づけない場合も少なくありません。

 

便潜血検査と痔の関係

便潜血検査が陽性となった場合、痔が原因である可能性が高いことは事実です。ただし、それだけが原因とは限りません。便潜血検査は大腸の出血を検出するものですので、痔以外の原因も隠れていることがあるのです。

「痔があるから精密検査を受けなくていい」という心理が働くかもしれません。それでも、上述したような理由から、便潜血検査が陽性になった場合には必ず大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。

 

痔とは

肛門の病気にはいくつかの種類があり、一般的には「痔」として知られています。痔は、肛門周辺に発生する不快な状態で、大きく分けて三つのタイプがあります。

まず「いぼ痔」と呼ばれるものは、肛門の内部や外部に小さな突起ができる症状です。「きれ痔」は、肛門の皮膚に小さな裂け目が生じることで、痛みや出血を引き起こすことがあります。最後に「痔ろう」は、肛門内部に膿を溜めるトンネルのようなものが形成される病状を指します。

 

痔があって便潜血検査が陽性になった場合

痔が原因で便潜血検査が陽性になるかもしれません。ただし、便潜血検査が陽性の場合、大腸がんが見つかる割合は約2.4%です。そのため、痔があることが分かっている方であっても陽性結果を軽視せず、精密検査を受けたほうが良いでしょう。痔の自覚がある方でも、大腸内視鏡検査を受けることで、大腸がんの予防や早期発見、早期治療につながります。

参考元:人間ドックVol.35、Mo1、2020年『痔の自覚がある便潜血陽性者への大腸内視鏡検査の 積極的受診勧奨に向けて

便潜血検査で陽性が出た場合の対応としては、まず大腸内視鏡検査による精密検査を受けることがおすすめです。そして、痔の治療も適切に行うことで、検査結果に影響を与える可能性を減らすことができます。

 

便潜血検査で注意すること

便潜血検査は、消化管からの微量な出血を検出するためのものです。正確な結果を得るためには、以下の点に注意してください。これらの注意点を守ることで、便潜血検査の正確性を高められます。

 

水に触れさせない

便がトイレの水に触れると、検査結果に影響を与える可能性があります。便を水に落とさないように、トイレットペーパーや採便用シートを使用して、便を直接受け止めましょう。

 

表面をなでるように採取する

便の表面には、出血の痕跡が最も出やすくなります。専用のスティックを使って、便の表面を軽くなでるようにして採取しましょう。

 

採取日と提出日のタイミング

採取した便は、時間が経つと変質するため、できるだけ早く提出することが望ましいです。採取から2〜3日以内に提出することを心がけましょう。便を採取した日を間違えないように袋に記載してください。

 

保管方法

採取した便は、ヘモグロビンが分解されないように、冷暗所で保管することが重要です。冷蔵庫での保管が理想的ですが、食品とは別の場所に置くか保冷剤を使用してください。

 

生理中の採取は避ける

生理中は、経血が便に混じることがあり、誤った陽性反応を引き起こすかもしれません。生理期間は検査を避けましょう。

 

大腸内視鏡検査を受けた方がいい場合

便潜血検査の結果で、検査を受けるか迷うかもしれません。時間がなくて忙しい場合などはつい後回しにしがちになります。ただし、健康を守るためには大腸内視鏡検査を受けることが大切です。

定期的な検査によって、もし病気があった場合には早期に治療を始められます。もし検査を受けて何も見つからなかったとしても、安心して日常生活を送れるため無駄ではありません。健康管理の一環として、検査を受けることをおすすめします。

 

便潜血検査が陽性だった場合

便潜血検査で陽性の結果が出たら、それは注意が必要なサインです。この検査は、便に微量の血液が混じっているかどうかを調べるもので、陽性とは血液が検出されたことを意味します。これは、大腸にポリープやがんなどの問題がある可能性があるため、放っておくのは良くありません。そのため、大腸内視鏡検査を受けて、専門医による詳しい診断を受けることをおすすめします。

健康を守るためにも、陽性結果を軽視せず、適切な行動をとることが大切です。

 

便潜血検査で1回だけ陽性だった場合

便潜血検査で陽性の結果が出た場合、場合によってはもう一度便潜血検査を行う「再検査」を受けて陰性だったと安心している患者さんを時々みかけます。これは絶対にダメです。たとえ再検査で陰性の結果であったとしても、大腸内視鏡検査検査を受けることが重要です。大腸がんであっても、毎回便潜血検査が陽性となる訳ではないのです。1回でも陽性の結果が出たならば、大腸がんを発見できる貴重なサインと捉えて、必ず大腸内視鏡検査を受けるようにしてください。

 

お腹の症状があるけど便潜血検査が陰性だった場合

便潜血検査は、便に血が混じっているかどうかを調べるものです。ただし、すべての大腸がんが便潜血検査で見つかるわけではありません。2日連続で陰性という結果が出たとしても、それだけでは大腸がんがないという保証にはなりません。

  • 目に見える出血があった

  • 便秘や下痢が続いている

  • 便の形が細くなった

  • 腹痛がある

このような症状がある場合は、便検査の結果が陰性の場合でも、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。不安な場合は、まずは医師に相談しましょう。

 

結果が陰性でも過去に大腸ポリープがあった場合

大腸ポリープは、一度取り除いても、その後に別の新たなポリープが発生することがよくあります。過去にポリープを取り除いた経験がある方や、家族に大腸がんの方、大腸ポリープを切除している方がいる場合は、大腸ポリープが見つかる頻度が高いとされています。そのため、定期的な大腸内視鏡検査を受けることが重要です。

このように、遺伝的な要因や個人の体質によってポリープができやすい方もいますので、自分の健康状態や家族歴を考慮して、医師と相談しながら検査計画を立てましょう。

 

大腸内視鏡検査とは

大腸内視鏡検査は、医師が肛門から挿入する細長い内視鏡を通じて大腸の内部を詳細に観察する検査です。この検査により、大腸の健康状態をチェックし、異常があればその原因を特定できます。大腸ポリープ、炎症、潰瘍、がんなど、さまざまな病変を発見し、適切な治療を行うための重要な検査です。

厚生労働省は、便潜血検査の陽性反応が出た場合の精密検査として大腸内視鏡検査を推奨しています。大腸内視鏡検査は、大腸の病変を直接観察できるだけでなく、必要に応じて組織のサンプルを採取できたり治療(切除)したりできるため、精密検査の中で最も精度が高く、大腸がんを予防することもできる唯一の検査であるとされています。

 

便潜血検査が陽性でも検査をしない方も多い

現在の日本では、便潜血検査が陽性であっても約60%の人しか大腸内視鏡検査を受けていません。大腸内視鏡検査を提供できるところが限られていることにくわえて、羞恥心などもあり、残念ながら日本での精密検査受診割合はとても低くなっています。これが先進国のなかでも日本で大腸がんが減少していない大きな要因であるとされています。

参考元:日本大腸肛門病学会 大腸がん検診

大腸がんは早期発見が鍵

大腸がんが発見された場合、落ち込んでしまうかもしれません。しかし、早く治療開始できるチャンスができたと考えてみましょう。

早期発見が重要である理由は、他のがんとも共通する内容ですが、大腸がんが初期段階では自覚症状がほとんどなく、進行すると治療が困難になるためです。大腸がんは、臓器別で見ると日本では男女ともに2番目に多いがんです。しかし、大腸がんは早期に発見された場合、5年生存率は90%以上と治癒率が非常に高くなります。

検査せずに放置した場合、大腸がんは知らないうちに進行しているかもしれません。

参考元:全国がんセンター協議会 5年生存率
:最新がん統計:[国立がん研究センター がん統計]

 

大腸内視鏡検査の流れ

大腸カメラの検査を受ける場合の流れは以下のようになります。

  1. 検査前日

  2. 検査当日の前処置

  3. 検査前の準備

  4. 検査の実施

  5. 検査終了

  6. 検査結果の説明

 

検査前日

検査の前日は、食事に注意が必要です。消化に良い食事を選び、夜8時までに食べ終えましょう。食物繊維は避けてください。検査食を利用すると、便がきれいになりやすいためおすすめです。

水分はその後も普通に摂ってください。就寝前には下剤を服用します。

 

検査当日の前処置

検査当日の朝から、前日に服用した下剤の効果で排便があります。

検査の4時間前からは、腸をきれいにするための腸管洗浄剤を決められたペースで飲み始めてください。飲み始めて30分から1時間で排便が始まります。

5回から8回程度で便の状態が固形から液状へと変わります。透明または薄い黄色の液状便になれば、前処置は完了です。

 

検査前の準備

便がきれいになったら、検査用の特別なパンツに着替えます。このパンツは後ろに穴が開いているため、履くときに注意してください。

その次に、点滴のためのルートを確保します。検査中に必要に応じて鎮静剤や他の薬を追加できるようにするため必要です。

 

検査の実施

検査室でベッドに横になってください。鎮静剤を使用する場合には、点滴のルートから投与します。薬が効いてくるとすぐに眠くなります。

鎮静剤を使うと眠っている間に検査を行うため、苦痛はほとんどありませんのでご安心ください。検査は約15分から20分で終わります。もしポリープが見つかれば、その場で取り除けます。

 

検査終了

検査が終わったら、リカバリー室で休んでいただき、鎮静剤の効果がなくなるのを待ちます。これには30分から1時間ほど必要です。目が覚めたら、着替えていただきます。

鎮静剤を使っていない方でも、ポリープを取り除いた場合は30分から1時間ほど安静に過ごしていただきます。

 

検査結果の説明

目が覚めたら、内視鏡写真を見ながら検査結果の説明を受けます。ポリープを取り除いた場合には、その後の生活面の注意点も説明します。

組織検査を行った場合には、1~2週間後に郵送または直接来院して結果を確認してください。

 

まとめ

便潜血検査は、下部消化管(腸や肛門)のどこかに出血をきたすような病気がないかを調べるための検査です。この検査で「陽性」と出た場合、何かの病気が潜んでいる可能性があります。ただし、必ずしも大きな病気があるとは限りません。たとえば、痔が原因で血が出ることもあります。

もし検査で「陽性」が出た場合には、決してそのままにせず、大腸内視鏡検査を受けることが大切です。2日間のうち1回だけ「陽性」が出た場合でも、痔がある方であっても、念のために検査を受けることをおすすめします。

また、陰性であっても何らかの自覚症状がある場合には大腸内視鏡検査を受けましょう。大腸がんがあったとしても便潜血検査で採便するときに必ず出血しているわけではないためです。自分の身体を守るためにも、便潜血検査の結果でよく分からないことがあれば必ず専門医に相談するようにしましょう。