周りが静かな状況で、お腹が突然ぐるぐると鳴ってしまうと恥ずかしいですよね。鳴ってほしくないときに限って、なぜか音が響いてしまうものです。
慌てて音を止めようとしても、なかなか止められません。そのため、音が収まるまで待つしかないこともあります。お腹が毎日のようにギュルギュル・ゴロゴロと鳴ると感じる方もいれば、あまりお腹が鳴らないと感じている方もいます。その違いは何でしょうか?
お腹が頻回に鳴ると、病気ではないかと心配になったり、静かな場所に行くのが不安になったりするでしょう。しかし、お腹が鳴ることが必ずしも健康の問題があるとは限りません。今回は、お腹が鳴る理由とその対策について、わかりやすく解説します。
お腹の仕組み
お腹がぐるぐる鳴る理由を知るために、まずはお腹の仕組みをみてみましょう。食べ物は口から入ってから胃、小腸、大腸を通り、消化・吸収され不要なものが便として排泄されます。
食べ物は、食道を通って胃に送られ、まずは胃の中で一時的に蓄えられます。食べ物の消化と吸収は主に小腸で行われますが、小腸の処理能力には限界があるため、胃で一時的に食べ物を保管し、少しずつ送り出す必要があるのです。
その後、食べ物は小腸の一部である十二指腸に移動し、肝臓と膵臓から分泌された消化液が加わることで消化が進みます。小腸は栄養素の吸収を行う主要な場所です。小腸に送られた食べ物は、小腸の消化液によって細かく分解され体内に吸収されます。
小腸で消化されなかった分は最後に大腸に送られます。大腸の主な役割は水分の吸収です。大腸で水分が吸収されることで固形の排泄物が作られていきます。そして腸内細菌が残りカスを分解し、最終的に排泄物が肛門から排出されます。
お腹がぐるぐる鳴る原因
お腹がぐるぐる鳴る理由は、主に消化管の運動(蠕動運動)によるものです。空腹時や消化中に腸が収縮して内容物を移動させる際に音が発生します。基本的に、身体の自然な反応なので心配しすぎる必要はありません。ただし、心理的要因や病気が原因で、お腹が鳴ることもあります。
生理的な原因
生理的にお腹が鳴る原因は、お腹の働きによって起こります。
食後の消化過程
食後は特に、食べたものを消化するためにぐるぐるとお腹が鳴ることがあります。食後にお腹が鳴るのは、胃が食べ物を消化するために活発に動いているからです。食べるときに空気を一緒に取り込んでしまうと、小腸を通るときに音が鳴りやすくなります。
空腹
空腹時は、胃が強く収縮するためにお腹が鳴りやすくなります。収縮によって、胃の中に残っている食べ物の残りや水分、空気が音を立てることが主な原因とされています。お腹が空いた時に「ぐぅー」というお腹が鳴るのは、ほとんどの方が経験したことがあるのではないでしょうか。
ガスの発生
お腹が「ボコボコ」と鳴る原因は、腸内にたまったガスです。腸が動くときにガスも一緒に動くため、音が発生します。食べ物の種類によってガスが発生しやすいものもあり、それが関係していることもあります。
また、腸の狭い部分をガスが通過するときに、大きな音が鳴ることがあります。
頻繁にお腹が大きく鳴ると心配かもしれませんが、通常は問題ありません。
生理や妊娠
生理が始まると、子宮が収縮することでお腹が鳴る場合がありますが、心配する必要はありません。妊娠初期には、腸の動きが鈍くなることでガスが体外に排出されにくくなり、体内にたまりやすくなります。これが原因で、お腹が鳴ることがあるとされています。
心理的な原因
ストレスがかかると、胃腸の働きが乱れます。これは、自律神経が胃腸の動きをコントロールしているためです。疲れや精神的なストレス、生活習慣の乱れが原因で、腸の動きが不規則になることがあります。また、お腹の音が気になりはじめると、不安や緊張を感じることで、余計に強くお腹が鳴ってしまうこともあります。
お腹が鳴る場合に可能性がある病気
お腹が鳴る原因が病気の場合には、過敏性腸症候群、大腸がん、腸閉塞、急性胃腸炎などがあります。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、20代から40代の人々に多く発症します。この病気の原因ははっきりとは分かっていません。精神的なストレス(緊張や不安)や身体的なストレス(過労、睡眠不足、不規則な食生活)が関係していると考えられています。これらのストレスが腸の動きに影響を与え、慢性的に便秘や下痢などの症状を引き起こす病気です。
I主な症状は、腹痛を伴う便秘や下痢などの便通異常です。これらの症状は長期間にわたって繰り返し現れます。排便後には一時的に症状が和らぐことが多いです。また、食事が症状を誘発することがありますが、睡眠中には症状が現れないのが特徴です。その他の症状としては、お腹がギュルギュル・ゴロゴロ鳴る、お腹の張り、ガスが止まらないなどがあります。
大腸がん
大腸がんとは、大腸粘膜に発症する悪性腫瘍のことです。大腸がんによって便の通り道が狭くなっている場合、そこを便やガスが通る時にゴロゴロと音が出たり、狭いところを便が通過できるように便を送り出す腸の動きが強くなるとギュルギュル鳴ることがあります。頻繁にお腹が鳴る場合、音が不自然に大きい場合、便の形状や色の変化、腹痛、体重の減少など、他の症状を伴っている場合、大腸がんの可能性も考えられますので注意してください。
腸閉塞
腸閉塞は、腸が詰まってしまう病気です。この病気の前兆的な症状として、痛みが周期的に強くなったり弱くなったりします。これは、腸が詰まりを解消しようと周期的に動くためです。腸が一生懸命動くと痛みが強くなり、疲れて休むと痛みが和らぎます。この痛みのサイクルは約30分ごとに繰り返されることが多いとされています。
完全に腸が閉塞してしまうとガスも出なくなるため、お腹がかなり張ってかなり強い腹痛や嘔吐がみられるようになりますが、完全閉塞には至っていない段階では下痢やお腹の鳴りが起こることがあります。
急性胃腸炎
急性胃腸炎は、胃や腹部の痛み、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れる病気です。主な原因は細菌やウイルスの感染で、多くの場合に一時的な症状のため「急性」胃腸炎と呼ばれます。この病気は、刺激の強い食べ物や飲み物の摂りすぎ、ストレス、くすりの副作用などでも起こる病気です。
症状は突然現れることが多く、吐き気や嘔吐、腸のゴロゴロ音、発熱、腹痛などが見られます。最も一般的な症状は下痢です。時には便に血液や粘液が混じることもあります。また、腸がガスで膨らんだり、むくんだ腸が動く時などに痛みを伴うこともあります。発熱や全身の体調不良、筋肉痛や疲労感も急性腸炎で起こる症状です。
乳糖不耐症
ヨーグルトや牛乳などの乳製品を摂取すると、お腹がゴロゴロ鳴って腹痛・下痢を起こすという人がいると思います。これは、乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」が不足しているために起こり、「乳糖不耐症」と呼びます。大人になってから「乳糖不耐症」が出る方も少なくないため、子供の頃は牛乳を平気で飲めたのに大人になってから下痢するようになった、という方はこれに当てはまるかもしれません。日本人の6~7割が乳糖不耐症と言われていますが、これは体質なのでどうしようもありません。
お腹がなりやすい方の特徴
お腹がぐるぐる鳴りやすい方には、いくつか共通する特徴があります。生活習慣を見直すことで、改善できる場合もあります。
1. 長時間座る仕事や生活
長時間座って作業することで、胃腸が圧迫され空気が滞りやすくなります。
2. 冷え性
冷え性の方は腸内にガスが溜まりやすく、お腹が鳴ることが多くなると言われています。
3. 早食い
食べ物をよく噛まずに早く食べると、空気を一緒に飲み込んでしまい、お腹が鳴りやすくなります。
4. 脂質の多い食生活
脂っこい食べ物をよく食べる方は、消化に時間がかかるため、ガスが溜まりやすくなります。
5. アルコールを過剰に摂取する
アルコールは消化器官の動きに影響を与えます。
6. 香辛料などの刺激物を好む
辛い食べ物や香辛料は腸を刺激します。
7. 運動不足
運動不足だと腸の動きが鈍くなります。
8. 便秘
便秘になると腸内にガスが溜まりやすくなります。
9. ストレスを感じやすい人
ストレスや緊張が腸の動きを活発にし、お腹が鳴りやすくなります。
お腹が鳴ることの健康への影響
お腹が鳴ること自体は多くの場合心配いりません。ただし、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの症状を伴う場合は、消化器系の病気の可能性があります。お腹が鳴る以外に、他の症状がある場合は早めに消化器内科の医師に相談することをお勧めします。
下痢や便秘、腹痛を伴う場合
下痢や便秘、腹痛などを伴う場合、過敏性腸症候群、腸閉塞、大腸がんの可能性も考えなければなりません。強い腹痛や持続的な症状がある場合は、医師の診察を受けることが重要です。
吐き気や嘔吐を伴う場合
食後にお腹が鳴るだけでなく、吐き気や嘔吐がある場合には、ウイルス感染や細菌感染の可能性があります。また、過敏性腸症候群、腸閉塞でも吐き気や嘔吐がみられます。嘔吐が頻繁に続くと脱水症状を引き起こすことがあるため、早めに受診しましょう。
おならのにおいや回数が気になる場合
おならのにおいがいつもと違う、または強いと感じる場合、腸内環境が悪化している可能性があります。腸内の悪玉菌が増えるとガスが発生しやすくなり、お腹の音やにおいが強くなることがあるとされています。また、ガスが溜まりやすくなっている場合には、過敏性腸症候群、腸閉塞、大腸がんなども考えられますので、症状が気になる際は消化器内科でご相談ください。
お腹が鳴るのを防ぐ方法
お腹が鳴るのが気になる場合には、食事の工夫や生活習慣の改善で対応できることもあります。完全に音が止められるとは限りませんが、試してみる価値はあると思います。どうしても改善が得られず、気になる場合は、医療機関を受診してみてください。薬剤で対応できることもありますが、残念ながらそれでも完全になくすことは難しい場合が多いです。
食事の工夫
お腹が鳴りやすい食材を避けることで、食後にお腹が鳴るのを減らせるかもしれません。ただし、鳴りやすい食べものは個人によって違いますので過度な期待は禁物です。
ゆっくり食べる
食事の際にゆっくりとよく噛んで食べることで消化がスムーズになり、お腹の音も減らせることがあります。
ガスが発生しやすいとされる食べ物を避ける
一般的に以下の食材はガスが発生しやすいとされています。参考にしてみてください。
- 小麦
- 乳製品
- とうもろこし
- 玉ねぎ
- ごぼう
- キノコ
- イモ類
- 納豆
- 豆腐
- リンゴ
- 炭酸飲料
たとえば朝にパンを食べ、昼にパスタやラーメンを食べると、お腹が鳴りやすくなることがあります。小麦には「フルクタン」という糖質が含まれています。このフルクタンは小腸でほとんど消化・吸収されませんので、大腸まで到達しガスが発生します。このガスが腸内で移動する時に「ギュルギュル」と音が鳴るとされています。
お腹に刺激になるものを控える
- 冷たいもの
- 唐辛子
- アルコール
- カフェイン
お腹に刺激になるものを摂取すると、腸が刺激されて過剰に動くことでお腹が鳴ることがあります。特にアルコールは腸に強い刺激を与えて腸管蠕動を亢進させたり、ガスが多く発生する原因となることもあるため、お腹の音が気になる場合には控えてみましょう。また、これらを摂り過ぎた場合は胃や腸に負担がかかりますので、それらの点を理解した上で飲酒するか、控えるかするしかないでしょう。
生活習慣の改善
生活習慣を改善することで、胃腸の動きを整える効果が期待できます。ストレスを避け、運動を取り入れてみましょう。
ストレス管理
腸の動きは自律神経によってコントロールされています。過度なストレスや緊張が続くと、自律神経のバランスが乱れてしまい、便秘や下痢などの症状が現れることがあります。
自律神経を整えるためには、まず十分な睡眠をとることが大切です。また、ゆっくりとお風呂に浸かることでリラックスし身体を休めましょう。リラックスできる時間を確保することで、自律神経のバランスを保ち腸の健康をサポートできます。
適度な運動
運動は腸の動きを活発にし、ガスの移動を助けるとされています。日常生活に適度な運動を取り入れてみましょう。運動する時間が取れない方は、できるだけ階段を使うようにしたり、一駅分歩くようにするなど、日常生活の中で「歩く」ことを意識してみてください。
また、仕事中に休憩を兼ねてストレッチをするのも良いかもしれません。長時間座っている場合には、ガスが1か所に溜まらないように、定期的に背筋を伸ばしたり、腰をひねったりしてみましょう。
医療機関を受診する
腸内環境を整えるために、整腸剤を活用することも一つの方法です。整腸剤は即効性がないため、最低でも1か月ほどは継続して服用し、お腹の調子が良くなれば自分に合っていると判断できます。整腸剤には多くの種類があり、個人によって合うものが異なります。どの整腸剤を選べばよいか迷う場合、いろんな整腸剤を試したい場合は、医師に相談してみましょう。
まとめ
多くの場合、お腹が鳴ることは自然な生理現象であり、特に心配する必要はありません。お腹の音が気になる場合、まずは生活習慣(ストレスの有無、食事内容、運動習慣など)を見直してみましょう。ただし、頻繁に鳴るように感じる場合や、お腹の音以外にも下痢や便秘、血便、お腹の張りなどの症状がある場合は、医療機関を受診することをおすすめします。また、定期的な大腸カメラ検査を受けることで、病気の早期発見や治療が可能です。
お腹が鳴る音がストレスに感じる場合、腹鳴恐怖症とも呼ばれる状態かもしれません。これは、お腹が鳴る音に対して、あまりに気になりすぎて不安や恐怖を感じる状態です。お腹の音に悩む場合は、気にしすぎているだけである可能性も十分ありますので、消化器内科の専門医に相談してみましょう。